「あれ」

変だ、ついさっきまでの記憶が無い。何時の間にか私はよく知っている道に立っていた。少し頭がクラッとしてすぐ横にある赤いポストに凭れ掛かった。地面に目を落とすと、私の影が出来ている。空はオレンジ色に染まっていて、今は夕方だという事がよく分かった。

私は歩いた。歩いて気付いたが、靴を履いていないらしくて黒い靴下に地面が擦れて痛い。それから下を見下ろした事で気付いたけど、私は今学校の制服を着ていた。紺色のセーラーに赤いリボン。何故ローファーを履いていないのか、理由は分からなかった

それから私は暫く歩く。

ふと足元を見ると、積み上げられた石があった。私は無意識にその石を蹴る。音を立てて崩れた石を私は見下ろした。
それからまた歩き出す。少しすると、交差点に出た。車は一台も走っていないし人も一人も居ない。可笑しい事は分かっている、そんなこと、もう随分前から思っていた。それでも私は歩き続けた。

もう何時間歩いただろう。分からない。
空は相変わらずオレンジ色で、私の影の向きは変わっていない。私はヒリヒリする足をなるべく庇いながら道を歩いた。
お腹が空いたとか喉が渇いたなんて気持ちは全然無い。早く家に帰りたかった。

暫く歩くと、散らばった石が見えた。私は無意識にその石を積み上げる。何段にも詰みあがったその石を私は見下ろした。


それから少し歩いた。空は相変わらずオレンジのままだった。





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