暖かいモノが僕を包んでいる。僕はただその暖かいモノの中で目を閉じるだけだった。それだけで、とても心地よい気がした。

僕にはまだ名前が無い。
勘違いしている人が沢山いるけど、名前が無い僕にはちゃんと意識がある。眠たかったり、苦しかったり、愛おしいと思える心がある。

僕はあともう何ヶ月かしたら、僕を愛してくれる人に名前をつけて貰えるんだ。そう考えるだけでとても嬉しい。どんな名前が貰えるのかな、とか。どんな人達が僕を愛してくれるのかな、とか。そんな事を考える。

此処に居たときの記憶は、きっと忘れてしまうけど。それでも僕は幸せになるために毎日生きるのだ。




今日はなんだか体が苦しい。僕は、思わず目を薄っすら開けた。なんだろう、いつもと様子が違う。苦しくて、息が出来なくなってきた。
僕はもがく。でも誰も助けてくれなくて、僕はどんどん小さくなっていく。

辛いとか苦しいとかを言っても、きっと外には聞こえていない。

「ママ、助けて」

そう言ってもママは気付いてくれなくて、僕はどんどん小さくなっていく。苦しくて苦しくて、ただ泣き叫んだ。
僕は自身がどんどん小さくなっていく中、此処に来る前に神様が言っていたことを思い出した。

あぁ、そうか。僕はママの子宮から血となって溢れ出すんだ。名前は付けて貰えないんだね。









----------
中絶は簡単にする事じゃないです

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -