道路を歩くソイツ等は、私を見るなり「ゲッ」と声を漏らしやがった。ゲッてなんやねん、ゲッて。それにちょっとイラッとして私は隣に居た彼を見た。そしたら、彼は私を見返してコクリと頷く。
その頷きを合図に私はソイツ目掛けて突進した。
「わっ! なんだよ」
そう言って、私を追い払おうとするソイツの手に思い切り噛み付いてやる。
「ざまあみろ、アホ男!」
痛そうに道に蹲るその男に、そう吐きかけてやった。それから私は彼の居る場所まで戻る。
「あの男、顔覚えとけよ」
「あたりまえや! またどっかで会ったらしばいたるわ」
「せやせや、その勢いや」
私達は何故か奴等に嫌われる。老若男女問わず色々な奴に嫌われてきた。でも、私達は屈しない。石を投げられた時は、その次の日投げてきた奴のポストに石を詰め込んでやった。変な目で見てきたり、悪口を言ったりする奴にはさっきみたいに突進したり噛み付いたりしてやる。それからしっかり顔を覚えて、また町で会ったら仕返ししてやる。
私等を馬鹿にするなんて百年早い。
「アイツ等本間、消えたらええのに」
私がそう漏らしたら、彼は少しだけ笑った。そして空を見上げる
「俺も同じ事思ったことあるわ」
「せやろ?」
「でもな、アイツ等が居らんなったら俺等は生きていけへんやろ」
私も彼と全く同じ事を考えていた。確かに悪口を言ったり、石を投げてきたりするアイツ等は消えたらいいと思うけど……。それでもアイツ等が居なければ私達は今頃野垂れ死にしているかもしれない。
美味しいものを食べるにはやっぱり奴等が必要だ。かと言って、あの毛がフサフサした生き物みたいにアイツ達に媚を売ったりはしない。それは私達のプライドに反するからだ。
不意に彼が出発の準備を始めた。
「何処行くん?」
「此処住みにくくなったやろ? せやから、移動や」
確かに、ずっと此処にいるのはまずい。私達は、いつももっといい場所を求めて彷徨うのだ。
「私も一緒に行く」
「当たり前や、着いて来い」
そう言われて嬉しくなった。私は先に出発した彼の後を追った。
私は羽ばたく、何処までも。そう、だって私は黒くて小さな暗殺者。