家を出た、持ち物は財布だけ。携帯なんかも持っていった方がいいかな? なんて思ったけど、身分を証明できる免許書が財布に入っているから心配ない。
コンビニに寄った、最後なんだし自分の好きな物を食べよう。そう考えたら何を選ぼうかかなり迷ってしまった。 結局、何時もと同じようにサンドウィッチとペットボトルのミルクティーを買った。買ったのは良かったけど、どこで食べようかかなり迷った……コンビニの前? ううん、だらしない不良じゃないんだしそれは無いかな。とりあえずトボトボと歩いてたら小さな公園があった、遊具は滑り台と砂場とブランコだけ。砂場では小さな女の子とその母親であろう人物が遊んでいた。私は取り合えずベンチに座ると袋からサンドウィッチを取り出した。いっぱいにかみ締めるとハムの美味しさとか、卵の美味しさがどんどん広がってきて少し悲しくなった。サワサワと心地よい風が吹く。この前までは雪が降っていたのに春になるとポカポカと温かい日差しが私を包んでくれた。私はサンドウィッチの最後の一切れを取った、サンドウィッチと共に飲んでいたミルクティーも半分は減った。最後の一切れをかみ締める。そして私はチラリと砂場で遊ぶ家族を見た、懐かしい、私も昔はああして遊んだものだった。私も昔はああなると思っていた、あんな風に自分の子供と一緒に砂場で遊ぶ日が来ると思っていた。……ダメだ、考えすぎると涙が出そうになってきた。私はサンドウィッチの最後の一口を口にいれた。そしてちょっと噛んでミルクティーで流し込む。ミルクティーはまだ少し残っていたが構わない。私は公園にあったゴミ箱にコンビニの袋とサンドウィッチの袋を捨てた、勿論ミルクティーはまだ手元にある。さて、そろそろ行こうか。私は歩き出した、公園を出る前にもう一度あの親子を見た、あの女の子はこれからどんな人生を歩んでいくのだろう、私はそんなの知らない。暫く歩いていたが、あの女の子の顔が頭から離れなかった。あの女の子は幸せそうだった、私はあの子が羨ましいのだろうか? 歩きながら考えてみたが、答えは出なかった。駅に着いた。今日の目的は最初から此処だった、勿論最初にコンビニに寄ろうとは思っていたが。私は切符を買う、どこまで行こうかな? 別に、何処でもいいか。適当に切符を買うと改札を通る、この時間は人が少ない。駅のホームには全然人が居なかった、少し寂しいホームに一人、私は立つ。線路の奥を見ると電車がドンドン近づいてくるのが分かる、小さな電車がどんどん大きくなっていく。私はその電車を見つめた、そして残ったミルクティーを一気に喉に流し込んだ。自分を安心させる為なのかもしれない、私は随分電車の近くまで来ていたのか眩しい光が私を包む。 気持ち良い、自然と思った。 その直後、私の耳は電車の騒音で埋め尽くされていた。

最後まであの子の笑顔が離れない。私もあの子みたいに笑えたらよかったのに。



(「身元が判明しました、はい、財布の中に免許書が入ってまして。えぇ。中谷裕子さん17歳です。いえ、彼女の所持品は財布だけでした。自殺で間違いありません」)



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