皆同じ髪型、同じ服、同じ靴、カバンも同じ。今の私のミッションは、いかに無個性になるかというものだ。無個性であることが第一条件、第二条件は無個性ながらも他の個体よりも優性であること。優性というのは、能力であり容姿である。中学の時にならった、優性遺伝と劣勢遺伝。劣勢の方が数は少ないが、劣勢は劣勢である。兎に角、今は皆と違う者は弾かれる、それだけだ。

「では、我が社を志望した動機は?」

「私は御社の――」

 私の前に座る3人の人物。男二人に女一人。この人達が、私の今後の人生を大きく左右するんだ。こんな、見ず知らずの他人に、私の人生が左右されてしまうんだ。
 次のミッションは、無個性がこの三人にどれだけ愛想を振りまけるか。少しでも彼らが気に入らないことをしてしまえば、ジ・エンドだ。

 私は、無個性になり、嘘を付かねばならない。罪人のように。じゃあなんだ、この会場は裁判所で? 私は処罰される前の罪人? いや、もしかしたらこの会場は処刑場で、私は処刑されるのを待つ罪人か。そういえばここに来る前に階段を上ったな、あれは十三階段? なら、前に座る男のネクタイ、あれは私の首を絞める縄か。

 私はこの場で無個性になって嘘を付くために、今まで生きてきたのだろうか。小学校、中学校、高校、大学と進んできたのだろうか。私には夢があった。つい1ヶ月前まで、夢があった。それを叶えるために、大学まで進んできた。たった1ヶ月でその夢を諦めて、無個性になることを選んだのは私だ。夢を諦めた私を待っているのは――死?


 私は御社を志望してなんかいません。そりゃあもう全然。笑っちゃうくらい。この会社がどんな会社かも知らずに来ました。きっと採用されたら、私の人生はクソ程つまらない人生になるでしょうね。
 こんなことを言ったら相手はなんて言うだろう。ふざけてるのか? 帰りなさい? 何て言われてもいい。そうしたら、私は持ってきたチェーンソーを取り出す。まずは隣に座る無個性の首を、その隣の無個性の首も。あとは前に座る処刑人の首を! そして罪人の勝利! なんてね。

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