私は子供だ。自分で何も決められない、小さな子供だ。

 私はずっと彼女の言う言葉を信じて疑わなかった。だから今までずっと彼女の言うとおりにしてきた。
 彼女が、この服が好きと言ったらその服を着たし、彼女が次の授業をサボりたいと言ったら私も一緒にサボった。
 私は彼女を愛していて、だから彼女も私の事を愛しているのだと、そう確信していた。

 去年の9月24日。私の誕生日の前日。彼女から連絡があった。話たい事があるから、少し時間を貰ってもいいかという事だった。断る理由なんてないし、心の奥底で、何かの期待をしていたのかもしれない。
 近くのファミレスで彼女を待つ間、私は何度も何度も深呼吸をした。

 やがて、7分遅れでやって来た彼女が話した内容は、彼女が婚約したというものだった。

 絶望だった。ずっと私と一緒に居ると思っていた彼女が、誰か別の、よく分からない男と暮らすのだと考えるだけで、吐き気がした。彼女は笑顔で、綺麗な長い薬指にある指輪を見せる。彼女の笑顔も、その綺麗な手も、いつもと違って見えた。

 私のものじゃない彼女なんて、もうこの世に存在しなくていい。



 私はもう子供じゃない。彼女から離れて、自立する必要がある。明日から、それが出来そうだ。
 ベッドの上で、もう息をしていない彼女を抱しめながら溜め息をついた。

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