失恋って何だろう。シツレン、死都蓮、She is Ren、いや、これは違うな。
毎年開かれる絵画コンクール。今年の御題は「失恋」のようだ。そもそも私、失恋なんて大層なもんしたことありませんし。いや、別に私の恋は全て実ってるのあはは。みたいな意味じゃなくて、恋だってしたこと無いし。
「アホらし」
絵画コンクールとかもうアホらしくなってくる。この御題を考えた奴出て来いと言いたくなる。あー、でも美術部は絶対に作品を提出しないとダメだし。もうなんだ、面倒臭い。去年の御題はネコであんなに簡単だったのに。
私は訳が分からなくなって、とりあえず紙に失恋と書いてみた。文字にすれば何かひらめくかもしれなかった。でも、紙に書かれた矢恋を見て止めた。失恋もまともに書けない、あたりまえだ、したこと無いし。
友達から失恋の話は聞いたことがある。随分辛いフられ方をしたらしく、泣き腫らした目は痛々しかった。別の友達からは、女に寝取られた話を聞いた。その友達も泣いてた。男友達からも失恋の話を聞いた事がある。そいつも女友達と同じように泣いてた。失恋って憎い奴だ。
私はピンクの絵の具を筆につけた。それを適当に紙にペタペタとつける。次に水色を取った。長い、棒を描くように、すーっと線を引く。赤、青、黄色でまたペタペタと色を乗せていく。随分カラフルになった。私は黒の絵の具をパレットに出す。そして、筆にそれをつけて、一気に。
結局全ての色は黒に消されてしまった。失恋ってこんな感じかな。楽しかった思い出とか、そういうのが全部無くなって、悲しくなって、憎しみに変わる。
「いや、こりゃないわ」
あー、ダメだ。もっかい、やり直し。