「あのね、おひさんは明るいよ」
「知ってるよ」
「アンタは、まぁっ暗だね」
にこにこにこ。どうやら悪気は無いらしい。何歳くらいだろうか、僕が見た感じだと、中学生くらいに見えるのだが。
「ここは沢山シトが居るね」
「電車だからね」
「ぐるぐるぐる」
「環状線だからね」
そろそろ年末だし、田舎にでも帰るのだろうか。でも、一人で帰るなんてこともあるんだなあ
「おひさんはポカポカあったかいよ」
「燃えているからね」
「でも、今日は出てないのね」
「ああ、今日は雪が降ってるからね」
随分と寒くなったものだ、と思う。この辺りで雪が降るのは随分と珍しい。今年、最初で最後となるだろう
「お蛇サマなのね」
「蛇?」
「ミ」
「ああ、来年は巳年だね」
年賀状、書いてないな。今年は仲が良い人にメールするだけでいいか。あけおメールなんて言うんだっけ?
「お蛇サマは、言ってるよ」
「何て」
「いい一年になりますようにって」
それにしてもこの子、何なんだろう。やっぱり中学生では無いのかもしれない。中学生の女の子が、一人で、電車に乗ってる男にこうやって喋りかけるなんて事があるか?
「カミサマなんだよ」
「え?」
女の子は小さく笑う。
「アンタが笑えば、おひさん出るよ」
「ん?」
最近の女の子が考える事はよく分からない。この前も女子高生が凄い爪をして電車内で化粧をしていたときは驚いた。
女の子の爪は……と、隣を向く。女の子なんて居ない。車内を見渡す、やはりいない。駅はまだもう少し先だ。隣の車両に移った気配は無かった。
あの子はなんだったんだろう。”カミサマなんだよ”って。もしかしたら、福の神だったりして。なんて思いながら窓を見た。
流れる景色。雪はもう降っておらず、空は日が照りだしていた。少しつもった雪は、直ぐに溶けてしまいそうだ。
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明けましておめでとうございます
2013年もよろしくお願いいたします。