証拠は全て揃った。そう言った宇宙人達はニヤニヤとほくそ笑むのでもなく、ポロポロと涙を零すのでもなく、カンカンに怒っているわけでもなく、ただ焦った表情をしていた。青色の彼等は、僕をじっと見た。

何か悪いことをしたわけでもない僕はただただ黙り込んでいた。此処は宇宙船か? なんて思いながら、ただただ黙っていた。

宇宙人の言葉に乗せられて、僕がどんどん黒くなっていくのが分かった。真っ白だった僕はどんどん黒色に塗られていく。僕が黒くなっていく度に宇宙人達は焦った表情を安心した表情に変えた。その安心した表情はアホみたいで、勿論焦ってる表情もアホみたいだった。

どんどん、どんどん僕は黒く塗られていって。あっと言う間に真っ黒になってしまっていた。宇宙人はやっと僕を椅子から解放してくれた。久しぶりに立って、足がちょっと馬鹿になっているのとお尻が痛いのとで、僕は苛々していた。
その晩、僕は鉄格子の中で寝ることになった。


それから、いくつか過ぎた日の朝。僕の所にやっと人間がやってきた。僕は宇宙人に騙された事を言った。人間は何かを言うこともなく、ただ僕の言うことを聞いていた。よく見るとそいつの顔はゴリラに似ていた。
ゴリラは僕に色々聞いてきた。「ヒヨコを殺したのは君か?」 確か昨日、青い宇宙人も同じ事を聞いてきた。僕はヒヨコなんて殺してなかった。ヒヨコは僕の弟と仲が良くて、だから僕はヒヨコを殺さなかった。
ヒヨコはいつも一人で巣から落ちて、危ない足取りで道を歩いてた。親元から離れたヒヨコは一人で道を歩いてた。あの日、僕は確かにヒヨコと合っていた。僕は「何処に行くの?」と声を掛けた、ヒヨコは「おじいちゃんの家」と言った。それだけ覚えている。

色々話を聞いた。ヒヨコの死体は2ヶ所から見つかった。一つはタンク山の白い柵の向こう側。もう一個は僕が通っている学校の門の前。
ニワトリはきっとポロポロと涙を流して、カンカンに怒ってる。僕を憎んでる、そして僕を憎み続ける。これからもずっと僕はやってない罪に問われながら生き続けなければならないみたいだった。


その次の日、僕の所に豚がやって来た。まるまる太った豚は悲しそうな目をして僕を見てる、僕は自分の目から涙が溢れていることに気付いた。気付いたら豚に怒鳴っていた。「何で来た」とか「帰れ」とか言っていた気がするけど、あまり覚えていない。その日はよく眠れなかった。
次の日ゴリラに頼んでみた、もう一度豚に会いたい。そしたら豚はまたノコノコ僕の前に顔を出した。昨日と同じ悲しそうな顔。

「真実はどうなの?」

豚は口を開いた。豚は僕がヒヨコを殺したと疑われていることを知っている、それでもこう聞いてくれたのは僕をまだ信じてくれているからだ。僕は言おうと思った「やってない」「殺してない」「助けて」でも思ったように口は開かなくて、そういえばこの前、あの青い宇宙人に頭をいじられて何かを埋め込まれたなぁなんて考えた。言いたかった言葉は口から出てこなくて、代わりに青い宇宙人が用意していた言葉が僕の口を借りて出てきた。

「これが真実です」




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