「パパ!おはよう」

「おはよー美佳ちゃん」

「ママがね、ごはんできたって」

「おう、今行く」



我が子に起こしてもらい、起きたときには朝飯ができあがっている。俺は純和風のその飯を食いながら、当たらないお天気ニュースを見る。仕事も安定しだして、俺のまわりは全てが順調だ。どっからどう見ても幸せなただの男



「パパ、もうお仕事行っちゃうの?」

「パパじゃなくて名前で呼べっつったろ」

「たいちー」

「そーよくできましたー」

「もう、あなたはまたそんなこと言って」

「子どもとはフレンドリーに接したいんだよ」

「父親の威厳も忘れないで下さいね」



たいち、と俺を呼ぶ我が子の頭をわさわさと撫でれば、くすぐったそうに笑った。女房に似て上品で大人しい。俺に似たのは少し髪がくるくるしてるあたりだろうか。



「たいち、はやく帰ってきてね」

「おうよ、美佳ちゃんは俺が好きですねー」

「たいち大好きー!」

「…俺も大好きだよ、美佳」











我が子にあいつの名前をつけたのは、何も悪くない子どもをせめて人並みには愛してやれるように







俺のまわりだけは全てが順調だ。俺はあの日から何もかも順調じゃない


女房に似て上品で大人しい。がさつで下品なあいつには全く似ていない










俺も大好きだよ、俺の愛した美佳








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