僕のクラスの高橋くんは、優等生である。成績は常に上位、生徒会に推薦されたり掃除当番変わってくれたりほとんど教室にいない僕のために焼きそばパンを買ってきてくれたりする。もちろん高橋くんのポケットマネー。

そんな別名パセリ、間違えたパシリで名の通る校内一の真面目くんキャラ高橋くんだが、今僕の目の前でタバコを吸っている方はその高橋くんなのだ。



「高橋くん、」



ちなみに僕がこの高橋くんに会うのはこれで3度目だったりする。コンビニの前で仲間らしき人たちと缶ビールを飲んでいた高橋くん、自販機を蹴り飛ばしてジュースを略奪していた高橋くん、そして今公園でタバコを吸ってる高橋くんだ。深夜二時。なんで僕がここにいるかって?それはこの時間帯が僕の活動時間だからだ。夜行性。



「お前、まだいたのか」

「何が?」

「……コンビニ」



高橋くんの二つの顔を知っているのはどうやら僕だけらしい。コンビニで何か欲しいもん選べと男前発言をした高橋くんに僕は、何の遠慮もせずジャンボサラミを差し出した。これ好きなんだよね。おつまみの王者。あとついでにカロリーゼロのサイダーも買ってもらって、僕たちは公園に戻ってきた。先週と同じ流れ。



「お前さあ、そろそろ夜出てくんの止めたら」



タバコを吹かしながら高橋くんは言う。



「なんで?」

「お前が住む世界じゃねえんだよ、ここは」



何言ってるんだこの人は。基本活動時間が深夜の僕は、最近高校デビュー(非行)した高橋くんよりも確実に経験豊富だ。何を上から目線で言いやがる



「気づいてんだろ、自分でも」

「僕はこの世界が好きだ」

「そらそうだろうよ、でも好きだからっていていい場所じゃねえ」

「もう、夜しか居場所はないんだよ」

「てめえのいるべき世界はここじゃねえっての。こんな底辺じゃなくて、もっと高いとこだろ」



高橋くんは何もかも分かったような話し方をする。別に僕は、高橋くんの言う高いところにいきたいわけでもない。ここが、ここが好きなだけなのに

初めて夜の高橋くんに会った時、言われた。お前はやり直せる、さっさと行けって。あん時はまだ意味が分かってなかった、分かりたくなかっただけかもしれないけど。僕の隣の高橋くんは無口で、僕の友達の高橋くんはぶっきらぼうだ。ぶっきらぼうはぶっきらぼうなりに何かを伝えようとしてくれたのかもしれない。お節介も甚だしいよね



「いったん向こういって、それでもこっちがいいってんなら戻ってこい。そんときゃ俺の子分にしてやる」

「なーにを偉そうにパシリが」

「優等生だっつの」

「学校では、でしょ」



ふむ。この世界とも、とうとうお別れか。悔しいな



「頑張ってくるよ、不本意だけど」

「お前の好きなジャンボサラミ毎日買っておくわ、不本意だけど」

「もし僕が戻ってきたら高橋くんに会ってあげるよ、不本意だけど」

「お前のジャンボサラミ毎日買っておくわ、不本意だけど」

「何なの?僕に対する思い出ジャンボサラミしかないの?」







隣の高橋くんは優等生




高橋くんは、笑った

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