「あ、ミュー兄」

「おー愛しのマイシスター!お兄ちゃんが来て嬉しいか、そうかそうか、抱擁を」

「帰れ変態」







第6話
思考回路を読みたいと願った日








誰も入っていいと言っていないのに勝手に上がり込みやがったミュウ兄は、いつも通り妹を抱擁し、いつも通り妹からエルボーを食らった。アホだ。その後めげてたこやきをいじりに行ったが、ミュウ兄を嫌うたこやきに案の定噛みつかれていた。アホだ。



「さあみんな聞いて!」



今日は報告があります、そう言って母さんたちが俺たちを集めた。何やら今日はただのパーティーじゃないようだ。思い出してみれば、ここ一週間くらい何か不審な動きはなかったかと言われればそうでもない。あれだけハマっていた韓流スターのライブに行かなくなったり、あれだけ嫌いだったゴキ…Gを素手で掴めるようになってたり、あれだけ好きだったじゃがりこにお湯をかけたポテトサラダを食べなくなってじゃがりこ本来の食べ方を好むようになっていたり。



「旅行、行ってくるから」



そしていつしかの冒頭に戻るわけだ。旅行が日本国内であればまだいい。話によると、どうやら北欧なり欧米なりををうろちょろするらしいのだ。埋まれ。更に驚きなのが、どうやら正月過ぎまで帰って来ないらしいこと。腹に帰れ。そして今期最大にして最悪な驚愕の真実は、なぜか植村家を拠点とするらしいこと。リンもミュウ兄もうちに居候するとかなんだとか。光熱費削減?ふざけんなてめーら海外でエンジョイするくせに子供は一つの家に押し込むのか爆発しろ



「1ヵ月は帰ってこないと思ってね!」

「語尾にハートが見えるうざい」

「ていうか父さんたちは?」

「行くわよ、4人で」

「いい年してダブルデートか畜生お土産よろしく」



根本から間違ってる気がするのは俺だけか?子ども置き去りにして海外旅行する親がどこにいる。ここか。



「依鈴、今から荷物取りに行きなさい。あ、行ってる間はうち鍵閉めとくから必要なものは全部揃えとくのよ」

「まじでか母ちゃん」



今日をエイプリルフールかなんかと勘違いしてんじゃねーか。大学生二人置いてくとかどういう思考回路してんだこの親どもは。…あ、そういえば他の兄弟はどうすんだ



「全員でうちに住むの。沙織が帰ってきたら入れてあげてね」

「んじゃ、俺は友達んとこ泊まり歩くかなっと」



よくこんな家庭で道を踏み外さなかったなあと、自分を誉めたくなる



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