「というわけで、リンさん」

「なんでござんしょ」

「メシ。」

「自分で作れや」

「めんどい」

「殴ってやろうか」

「何でもいいからー」

「うっせーそこら辺の食パンでも食っとけ」

「焼いて」

「自分で焼けや」

「めんどい」

「殴ってやろうか!」







第9話
チラリズムは好きじゃない








くだらない言い争いを何分続けたか、ようやくリンが負けて何かしらの食糧を探し始めた。しかし戻ってきた奴は手ぶらだ



「何もなかった」

「何も?」

「いえす、…キリスト」

「何で今最後にボソッとキリスト入れたんだよ」

「代わりに冷蔵庫の中からこのようなものが」



リンは持ってきた10万を扇子のように広げ、俺の前でひらひらさせた。どや顔してんじゃねえ



「本物?」

「らしいね。あとこれ、メモ」



メモには母さんの丸字で“このお金でやりくりしてね!”



「…いや、何で冷蔵庫」



まあ確かに考えてみれば、金がなくて1ヵ月もどう暮らすんだって話だよな。待てよ、光熱費とか色々込みで10万って大丈夫なのか?冬だし暖房使うぞ、暖房。しかも俺らだけじゃなくて他にも色々いるし、まあ、…いいか。面倒なことは考えんのやめた。正月にはお袋たちも帰ってくるだろうし、少し滞納したくらいじゃ問題ないだろ。何もやったことのないティーンズに正しい人間活動なんぞできるわけがない。大学生なんて所詮ただのガキだ。

うだうだしてるうちに、時計の短針はもう11を指していた。朝どころじゃない、昼だ。とりあえず何でもいいから飯にありつくことからスタートしよう。頭使ったら腹減った。



「よし、もうめんどくせーからどっか食いに行くぞ」

「まあ海斗さん!私にフランス料理をご馳走してくれるのね!」

「そうか、リンは留守番がいいんだな」

「マック行こう、マック」



とりあえず1万だけ持って、家を出る。



「リン、どこ行きたい?」

「焼き肉」

「帰れ」

「ステーキ」

「やっぱ近いしマックにすっか」



昼から肉肉言ってるリンに、仕方がないからナゲットを買ってやることにした。俺ってやさしい



「フルーリー食べたい」

「ガリガリ君で我慢しろ」

「えー……、あ」



リンの目は、奥から出てきたバイトの男をとらえていた。背は高い。眉が極端に薄く耳にはピアスをしているにも関わらず、何故かとても爽やかなオーラを放つ男だ



「白藍ー!」

「お、播磨じゃん」

「バイトしてんの?」

「そ」

「似合わねー!」

「うるせ!」



白藍と呼ばれた爽やかボーイは俺をちらりと見た。チラリズムは、好きじゃない。



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