「というわけで、リンさん」 「なんでござんしょ」 「メシ。」 「自分で作れや」 「めんどい」 「殴ってやろうか」 「何でもいいからー」 「うっせーそこら辺の食パンでも食っとけ」 「焼いて」 「自分で焼けや」 「めんどい」 「殴ってやろうか!」 チラリズムは好きじゃない くだらない言い争いを何分続けたか、ようやくリンが負けて何かしらの食糧を探し始めた。しかし戻ってきた奴は手ぶらだ 「何もなかった」 「何も?」 「いえす、…キリスト」 「何で今最後にボソッとキリスト入れたんだよ」 「代わりに冷蔵庫の中からこのようなものが」 リンは持ってきた10万を扇子のように広げ、俺の前でひらひらさせた。どや顔してんじゃねえ 「本物?」 「らしいね。あとこれ、メモ」 メモには母さんの丸字で“このお金でやりくりしてね!” 「…いや、何で冷蔵庫」 まあ確かに考えてみれば、金がなくて1ヵ月もどう暮らすんだって話だよな。待てよ、光熱費とか色々込みで10万って大丈夫なのか?冬だし暖房使うぞ、暖房。しかも俺らだけじゃなくて他にも色々いるし、まあ、…いいか。面倒なことは考えんのやめた。正月にはお袋たちも帰ってくるだろうし、少し滞納したくらいじゃ問題ないだろ。何もやったことのないティーンズに正しい人間活動なんぞできるわけがない。大学生なんて所詮ただのガキだ。 うだうだしてるうちに、時計の短針はもう11を指していた。朝どころじゃない、昼だ。とりあえず何でもいいから飯にありつくことからスタートしよう。頭使ったら腹減った。 「よし、もうめんどくせーからどっか食いに行くぞ」 「まあ海斗さん!私にフランス料理をご馳走してくれるのね!」 「そうか、リンは留守番がいいんだな」 「マック行こう、マック」 とりあえず1万だけ持って、家を出る。 「リン、どこ行きたい?」 「焼き肉」 「帰れ」 「ステーキ」 「やっぱ近いしマックにすっか」 昼から肉肉言ってるリンに、仕方がないからナゲットを買ってやることにした。俺ってやさしい 「フルーリー食べたい」 「ガリガリ君で我慢しろ」 「えー……、あ」 リンの目は、奥から出てきたバイトの男をとらえていた。背は高い。眉が極端に薄く耳にはピアスをしているにも関わらず、何故かとても爽やかなオーラを放つ男だ 「白藍ー!」 「お、播磨じゃん」 「バイトしてんの?」 「そ」 「似合わねー!」 「うるせ!」 白藍と呼ばれた爽やかボーイは俺をちらりと見た。チラリズムは、好きじゃない。 |