「…あっつ」



すでに熱い扉を開けると、そこにはマグマやら炎やらで埋め尽くされた楽園が広がっていた



「こりゃ俺様の勝ちだな」









―23








灼熱地獄だなんて名前つけやがって、俺様にとっちゃこんなん灼熱天国だ。ここまで得意分野を生かせる場面は今までに一度もなかった。頭使うのもめんどくせえから、とりあえず溶岩の海をまっ二つにして向こう岸まで行くことにする。

腰にぶっささってる刀を抜き、精神を集中させて真っ直ぐ上に上げた。お、いい感じに分かれたじゃねえか。さすが俺様。現れた地面を歩いて出口まで向かう。んだよこれ、トラップもクソもねえ。楽過ぎ



「よっ、と。…あ?あたり?んだよ、呆気ねえな」



出口っぽい扉を開ければ、当たりの文字。運も味方につけるとはやっぱ俺様ってすべてが完璧だな!ははは!



「当たりって言われてもこっからどう進むんだよ、壁しかねえ」

「それはね、僕を倒してからだよ」



振り返れば、僕は秀才ですオーラを存分に放つメガネ野郎が入口付近に突っ立っていた。メガネをくいっと上げる仕草が非常に、非常に腹立たしい。



「てめえを潰せばいいのか」

「そ」

「…はっ、クソゲーだな」



結局戦うのかよ。だる。俺は気を解いて、さっき作った道を塞いだ。道の上にいたメガネ野郎は、流れてくる溶岩に触れないよう高くジャンプした。そう、高くだ。なんだこいつの跳躍力。気持ち悪いな

入口の足場へと着地したメガネを見れば、なぜか笑ってやがる。よく分かんねえけどむかつく。



「ははっ、君はモーセか?」

「モーセ?誰だそれ」

「かつて海を割ったという神話の男だよ」

「知らねえな」

「聞いたこともないのか?随分と頭が弱いんだね」

「ああん?天下の阿久様を侮辱するとはいい度胸じゃねえか」



逆側に行くのも面倒、こっからメガネ野郎に向かって適当に溶岩をぶつけまくる。そしてジャンプしまくるメガネ。こいつ反射神経良すぎじゃね?全部かわしてくるし、うざっ!空気読んで当たれ!



「ほう…やはり使い手というのは存在するのか」

「ほんとそろそろ当たれよ、めんどくせえな」

「それは無理だ、まだ死にたくはないからね」

「勝たねえと進めねえんだろ、俺様は早く再放送見たいんだよ帰りたいんだよ死ね」

「君のような攻撃しか能のないやつに僕は負けない」

「むかつくんだよさっきから、その上から目線」



手加減してやればいい気になってこの野郎、動物楽園〜ドンと一発!総集編〜見逃したらこいつのせいだ。滅多打ちにしてくれる。ああもう、何でかむかつくなこのメガネ!存在してることに苛立ちを覚える



「…分ーった、てめえ…クソカスに似てやがる」



辺りの溶岩が波状になり、メガネを襲う。絶対絶命の状況でメガネ野郎はにやりと笑った



「野蛮だなあ、炎の使い手さんは」

「黙れ草食」



…待てよ、こいつがもし一般市民だったらやばくね?うっかり殺っちまった場合、確実に減給される。困る。今月ピンチなんだよなあ



「……めんどくせ」







録画予約を忘れると焦る




早く帰って総集編見なきゃ。オランウータンのマツコ、あいつは無事に赤ん坊を産めたんだろうか。あー気になる



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