「…わあ」









―21








三つのアトラクションに一人ずつ挑んでいくという、どうにもふざけた展開になった。僕の担当は、針山。わざわざこんなふざけたトラップにはまりに行かず建物を壊したりして入ればいいものを、きっと長は僕らにトラップを通ってほしくて三人もよこしたんだろうなあ。まったく、所々お茶目なんだから。

そんなことをぼんやり考えながら歩き、穴を進んだ先の空間にたどり着けば視界に入る全ての壁が、針、針、針。床も壁も針だらけで、物理的にどう頑張ろうと無傷で通ることは不可能な構造になっている。針山じゃなくて針部屋と言ったほうが正しいんじゃないかい?まあ僕には全く関係のないことだけど。針山だろうと針部屋だろうと、僕の前では何の意味もなさない。ど真ん中の針がない空間を進めばいいだけさ



「と、思ったけど」



針だらけの部屋に、コロンと小石を投げ入れる。何も起きない。内ポケットから出した携帯寝袋に空気を注入して、投げ入れる。ガシャン。



「あちゃー。そうだよねえ、そんな軽い仕掛けなわけ無いよねえ」



お気に入りの寝袋は、部屋の中央で無残にも穴だらけになってしまった。これはひどい。どうやら、左右の壁が勢いよく閉じて侵入者を串刺しにするという仕組みらしい。寝袋で確認しておいて良かった。なんで寝袋なんて持ってるかって?ははっ、それは僕が天才だからに決まってるじゃないか


しかしさて、どうやって通ろうか。僕は宙を歩くことができるけど、左右から挟まれるとなると全く無能な力だ。横の針にやられる。天井が落ちてきて上下に挟まれる可能性も無くはない。ううむ。



「あらー?久々に侵入者さんー?」



突如かわいらしい声が針部屋に響いた。奥だ。



「誰だい?」

「侵入者さんに教える必要はないの」

「僕が侵入者さんじゃなかったら、君のことを教えてくれるのかい?」

「どうかしら。いい男だから教えちゃおっかな」

「君の方がいい女だよ」

「ふふ、侵入者さんとは違う形でお会いしたかったわ」

「何を、…もう出会っているだろう?」



とりあえず向こう側まで渡らねば話にならなさそうだ。疲れるけどこの方法しか手がない



「あら、進むの?串刺しにされるわよ」

「そっちにいるんだろう?君に会ってみたいからね」

「……達者なこと」



僕は僕の周り一メートルの空間における気圧をぐんと上げた。針部屋の空中を歩いて渡る。高気圧のせいで僕まで届かない左右の壁は、一メートルそちら側で行き場が無くふわふわしている。あ、よく見たら針全てに毒が塗ってあるじゃないか。危ない危ない



「まあ、どんなイリュージョンかしら。宙に浮くなんて…侵入者さん、あなた何者?」

「知っての通り、ただの侵入者さんだよ」







侵入者さんは紳士




へえ、面白いもの見ちゃった。なんてね。侵入者さんと戦う気はないの、そう言って彼女はこの空間から消えた。一体何をしに来たんだろう。…あららら、どうやらここはハズレ部屋みたいだ



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