「つまりあれか、なんかやばい組織なんだな」



なんかって、アバウトだな









―20








ブランシュールって何だとか言い出す馬鹿野郎に、そっからかと溜め息をついてまずブランシュールが何たるかを思い出してもらうところから始める。確かにあいつらなんてそうそう俺らの前に姿表さないし表立って関わらないけど、だからって忘れるような組織じゃないだろ。刺繍覚えろ、刺繍。横文字苦手?知らん覚えろ



「刺繍の色に何か意味あんのか」

「緑が弱くて黒が強い。あとはその間に赤とか青とかもあるよ、確か」

「特に黒は三人しか存在しないって噂だね」

「んじゃあ、お前ら実はその黒だっていうのか…!」

「うんそんなわけないよね」



よくこんな何も理解してない奴がいてあんなはったりが通用したもんだ。鎹すげえ。ほんとそこの銀髪は、金銭面と戦闘力と顔しか良いところないじゃないか。結構良いところ多いな、くそ。悪口にならない。あとは頭脳さえあれば完璧なのに残念だ

阿久に必死こいて理解させ(鎹は阿久に一から説明してやる気なんてゼロ)、それから一応作戦会議。長から聞いたのは、博愛が一人のボスと数人の幹部、それから五百人超の兵で成り立ってるってこと。その五百人超の兵が問題で、なんと彼らはみんな拉致された一般市民らしいのだ。五百人以上も誘拐して戦闘させてるなんて、組織の原則を完全に無視した行動だから潰されて当然ってわけ。一つの宗教みたいなもんだからね。同じ考えのやつらが集まって活動する、それが組織ってやつだ。しかも博愛なんて組織名掲げやがって、アホかアホかの一択しかないじゃんか。壮大な名前のくせに、やってることは拉致からの無償酷使と市街地の破壊。何が博愛だばかやろう国語の勉強でもしてやがれ



「難題は、その五百人をちゃんと帰すってところだよね」

「そいつらはボコボコにしちゃいけねえって言ってたな」

「うん、五百人は無事に保護して上のやつらだけしょっぴく」

「あとは幹部と被害者を見分けられるか、られないか」

「戦い方で分かんじゃねーの」

「指図してるやつらはやらせてばかりで戦えない可能性もあるね」

「もしくは幹部なりに強いか、どちらかじゃないかい」



向こうがブランシュールを雇ったってことは、俺たちに内情がバレて近々摘発されるのを知ってるってこと。でも緑階級が来たということは、ブランシュールにとって博愛は潰れても構わない利用価値のない組織だということ。で、要請に対しやってきた緑階級をそのまま使ってる博愛は、やっぱりそこまでの組織だということ。俺だったら緑なんか絶対雇わない。うちの戦闘部隊の方がよっぽど有能だ。



「A級組織だからなあ、そこそこ手の込んだことしてきそう」

「下っ端のふりして逃げようとしたり、ね」

「さすがにそんな安っぽいネタは仕込んでこねえよ」

「分からないよ、博愛なんて名前付けちゃうくらいだし」



鎹が広げた博愛のアジト見取り図(緑の男に書かせたやつ)を、三人で仲良く囲んでみた。凝視。



「…ははーん、なるほどね」



ようやく俺たちが三人も集められた意味を理解した。そういうわけか。本当に安っぽい作戦立ててきそうだなこの組織



「針山に灼熱地獄に、お化け屋敷」

「この組織のテーマはアミューズメントか何かかい?」

「…おもしれえ」







話者と話者と話者




敷地内に入るためには、三つのうちどれかの部屋を通らなきゃならないというなんともふざけた仕組み
しかもどの部屋が正解かはランダムで決まるとか、金かけるとこ完全間違ってね?阿久並の楽しい思考回路をしてる。ん?待てよ、この流れだともしや俺がお化け屋敷担当?



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