「で、君はどこの組織の者かな?」

「どこでもねえよ」

「ならお前は誰だ」

「にんげん」

「よーし今からてめえを火炙りにしてやる」



一キロほど離れた場所から射撃してきたらしい男は、あっけなく二人に捕まった。組織の人間でないと言い張る男、なら一体何のためにたった一人ぽっきりで襲撃してきたというのか。……あ、



「鎹…あれ」



阿久に刀を突きつけられているその男の左胸には、緑色をしたなにやら複雑な紋章の刺繍



「……ああ、」









―18








「阿久、離してあげて」

「ああん?」

「そいつの左胸見てみなよ」



俺の言葉に従って男を見ると、阿久は一瞬だけ目を見開いた。刀をしまい、目を細める。



「…なんて難しそうな刺繍だ」

「阿久に同意を求めた僕が悪かった」



阿久には理解出来なかったようだが奴の爆発的な頭の悪さは今に始まったことじゃないのでさておき、問題はその刺繍だ。男は驚いた顔で俺たちを見ている。それも当たり前、男のつける紋章は関係者しか知らないはずだからね。



「お前ら…もしや抜け族か」

「あは、さすがは緑ってとこかな。自分から業界用語をさらすとは、そんなんだから昇級できないんじゃないかい?」

「なっ…!」

「残念ながら僕たちは、抜け族じゃない」



鎹が俺と阿久をちらりと見て微笑む。もちろん俺には何をするか分かったが、阿久はあれ絶対理解してない。本当使えないやつだ。とりあえず、お願いだから何も言わないで黙っといてほしい



「紋章を知ってて、抜け族じゃなく、お前が顔を知らない」

「君は、そんな僕らを誰だと思うかい?」

「……まさか、黒…!」



突然今までの態度を一変し青ざめた男を見て、意味が分からないと首を傾げたのは阿久だけ。



「黒の素顔を見れるなんて、ついてる緑だね」



そう言って土を蹴り宙に浮いた鎹を見て、冷や汗を流したのは緑刺繍の男だけ。







魚の骨は喉に刺さる




さて、どう釣ろうか



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