このオレが見抜けなかったなんて、



「よろしくお願いしますね」



一生の、不覚









―14








オレの一日はユーラの一声で始まる。



「おいさっさと起きろ天パ」



毎朝ユーラに起こされるオレ、なんて幸せ者…!これほど幸福な男が、この世界のどこにいるというのか!



「なんやユーラ、オレと寝たいん?しゃあないわー添いぶふぉっ」

「 起 き た ? 」

「起きましたおはようございますユーラ様」



そして豪快なグーパンチで殴り起こされたオレは、愛用のアイロンと共に自分の忌々しい天敵(髪の毛)と死闘を繰り広げ、やっとのことで朝食にありつく。



「お!おはよーさんラズちゃん」

「おはようございます」

「今日の朝メシはー?」

「はいどうぞ」

「…何これ」

「カレーです」

「ごめん聞き取れへんかった」

「カレーです」



どうやら聞き間違いではなかったようだ。そしてきっとオレの視力が落ちたわけでもない。ラズちゃんがカレーだと言い張る目の前の緑色の物体は、確実にカレーじゃない。グリーンカレーとかそんな洒落たモンでもない。なんて美しくない緑。凝視。



「どうしたんですか、サイさん」

「いや…うん、これカ「カレーです」…何でカレーがこないなっとるんや」

「先輩が作り置きしたカレーが発酵しちゃって、でも勿体無いからサイさんならきっと残飯処…食べてくださるとおっしゃっていたものですから」

「いま残飯処理言うたな」

「やだサイさん!言ってませんよ」
バシン



そう言ってオレを叩く(殴る)ラズちゃんは、自分の腕力を把握しているんだろうか。最近ユーラに似てきたなあ、と嬉しいのか悲しいのか分からない感情を抱きながら緑色のカレーを運ぶ。まあ可愛いから全部許すけど…!



「お、サイ」

「シナ姉」

「お前…何を食べているんだ、それ」

「うん、触れんといて」



こうして朝食を取っていると、今みたいにシナ姉が話しかけてきたり、リューネのアホ面が陰湿なイジメを仕掛けてきたり、綿貫が静かに隣でパンを食べ始めたりする。一番酷いのは、阿久と鎹に終わりの見えない口喧嘩を目の前で延々と続けられることだけど。あれ、オレってかなり可哀想じゃね

そして朝食のあとは、庁内女子社員の「サイくんおはよう」というさながらハーレム要素満載の挨拶に悩殺スマイルで応対し、広い庁内を迷うことなく進みいつもの場所に落ち着く。



「サイじゃないか、ちょうどいい」

「待ってな鎹、ちょうどいいて何や悪い気しかせえへん」

「阿久に任務押し付けられたんだよ、見てこれ」

「うわ、遠」

「というわけで僕は今非常に怒っているんだ、殴られてくれるよね?」

「痛あああ!もう殴っとるやん!てめ!」



今日は食堂で見かけないと思えば、どうやら中庭で既に色々あったらしい。最悪だ。向こうの方でのびてるリューネの頭にデカいたんこぶがのっかってることから、おそらくあいつはオレより先に鎹の理不尽な奇襲を受けたのだろう。はっざまーみろ!あ、オレも同じか



「あ、鎹!まだ行ってなかったの?」

「ああ、おはようユーラ」

「おはようじゃないでしょ、はい行ってらっしゃい」



阿久が悪いんだよあんなやつ下痢になればいい、と爽やかに幼稚な発言をしながら鎹は去って行った。オレが言うのもどうかと思うが、やっぱりここの人間は阿呆ばっかだと思う。主に特課。見てくれに騙されてはいけない



「ほらリューネも寝てないで!あんたはこっち!」

「もーゆーらスパルター」

「わたあめあげる」

「俺実は任務大好きなんだよね1日いくつでも行けちゃう」

「そ、じゃあ今日のノルマ5つね」

「…冗談でしたーてへー…」



やっぱり、うん、単純



「あ、サイ!あとで来るからここにいてね」

「へーい」



なんだかんだ言ってユーラが一番大変なのかもしんない、なんてユーラの可愛らしさについて考えてたらいつの間にかオレは夢の中だった







オレの一日



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