朝起きて食堂に入る。食器のカチャカチャという音と話し声が聞こえてくると思いきや、待っていたのは静けさとアルコールのにおい。え、何してんのこの人たち何でこんなぐでんぐでんになってんの……酒臭っ

ジャバジャバと食器を洗うラズが見えたから、死人のように眠り込む職員たちを蹴り飛ばしつつ厨房に向かった。隅っこで両手に包丁を持ちながら爆睡してるユーラは全力で視界から外すことにする



「ラズ、何があったのこれ」

「おはようございます駿河さん。実は昨日の夜中、史雫さんがお戻りになりまして」

「シナ姉が?」



何となく振り返れば、頭のてっぺんに団子を作った女性が、大あくびをしながらだらだらとこちらへ歩いてくるところだった









―13








「ユーラ!新しい焼酎出せ」

「ユーラ先輩なら寝ちゃいましたよ、はいどうぞ」

「寝た?なんだ、みんなぶっ潰れたからユーラを付き合わせようと思ったんだが……リューネ、ばれてるぞ」

「あー…おかえり、シナ姉」



ラズの話によると、1時過ぎに帰ってきたシナ姉は寝ていた職員を片っ端から叩き起こし、飲み会をおっぱじめたらしい。なんともシナ姉のやりそうなことだ。そんでもって当の本人はすこぶる酒に強いんだから困ったどころの話じゃない。今だってトイレに行って帰ってきたという酒豪は、恐ろしいほどに素面である。ユーラが寝たのはシナ姉に潰されたからではなく、飲み会において秒殺で消えていく酒を秒殺で補充していく疲労に起因すると思われる。そして俺はその酒豪に捕まったわけだ。午前6時、早くも死亡が決定した



「起きてから30分も経ってないんだけど俺」

「日本酒と芋焼酎どっちがいい」

「焼き芋食べたい」

「芋焼酎か、いつの間にそんな酒強くなったんだお前は」

「待てよ、最近スイートポテト食べてないな」

「まあ私は飲み相手ができて嬉しいけどな!」

「ラズー、スイートポテト作って」

「さつまいも無いんです」



話が噛み合ってない?いやいや、聞き間違いにもほどがある。



「リューネ一人潰すのに時間はかからんだろ、誰か呼んで来い」

「うわひどい言われ様」

「仕切り直して宴会だ!とりあえず阿久鎹でも連れてこい」

「分かったサイ連れてくる」

「それだけはやめてくれ」



俺だって酒に弱いわけじゃないから、シナ姉を潰してやろうと常にもくろんでるけどもちろん連敗続き。シナ姉の飲み仲間である濱口のおっちゃんは、酒好きだけどすんごい弱いため毎回あっけなく自滅。シナ姉もお手上げなサイが酔うとどうなるかは時が来るまで想像にお任せということで



「ほら、さっさと誰か連れてこいリューネ」

「はーいよー…」



いそいそと爆睡中であろう阿久と鎹、どうせこんな朝っぱらに起きないであろうサイはほっといて、ついでに綿貫を起こしに行った。完全に話者飲みだ。まずい。何がまずいって、酔っ払うとみんな思い思いに能力を使い出すから色んなものへの被害が半端ない。そんで結局最後に駆り出されるのは俺だ。







空きっ腹に酒




昼過ぎ、長に叩き…いや殴り起こされた俺は、頭ぐわんぐわんの中焼け焦げたり水浸しになったり宙に浮きっぱなしになったりした物たちの時間を巻き戻した。眠気と格闘しながらなために所要時間三十五分。なかなかな大掛かり。俺の時間も巻き戻したい



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