「か、鎹さん!おはようございます!」

「ああ、おはようみんな」

「鎹さんよ!こっち向いてー!」



ちなみに鎹にファンがたくさんいるのは本当のことだったりするわけで、つまりはやつのナルシストに拍車がかかるということである









―12








「お、おはようございます…!」

「…………」

「こら阿久!ちゃんと挨拶返して!」

「ってえ!てめ、スリッパ!」

「いいのよリューネくん!私たち阿久さんに会えただけで嬉しいから」

「でも、…って阿久!ストップ!ちょ、あああもうこのすっとこどっこい!」

「誰がすっとこどっこいだ!」

「…リューネくんって可愛いわよね」

「私たちといくつも年変わらないのにね」



この滅裂コンビが面倒くさい理由の一つがこれだ。顔。鎹は確かにレディーファーストだし優しいし常に笑顔だし、(変な髪型だけど)人気があるのは分かる。だがしかし阿久とか一体何だ。仏頂面で眉間にしわ寄ってるしさっきみたいに挨拶も返さないし、俺たち以外となんてほとんど喋らない。あれか、そのクールな感じがいいのか!クールビューティーがうけるのか!言っとくけど阿久はクールでもなんでもない、ただの「阿久様ああああああ!!」

「うぐぇっ」

「…じゃ、俺ちょっと用事思い出したから帰るね」

「おい待てリューネ!逃げんじゃねえ!」

「阿久様、今日も今日とてかっこいいですね!ビューティフォー!」

「てめ、引っ付くな暑い!帰れ!いやリューネお前は帰るな俺様を助けろ」

「阿久様、自分はてめーじゃないです永瀬という名前が!あります!さあ永瀬と、永瀬愛してるとおっしゃってくだむぐぶっ」

「とりあえず性別をもういっぺん考えて出直せ」

「え…阿久様まさか自分が女に見えると……」

「なあリューネ、人間って焼くのと煮るのどっちが美味いんだ」



阿久が帰ってきたと聞いてすっとんできたらしい永瀬が増えたことにより、あたり一帯が一気に騒がしくなった。阿久と永瀬は例えれば俺とサイみたいな関係性ではあるけども、誰が見てもわかるように雰囲気がまるで違う。永瀬は阿久にぞっこんだからね、阿久様だしね、俺なんかあのくるくるに敬語とかいう高度な言葉を使われたことなんて当たり前にないしね。人間は焼いても煮ても不味いと思うよ阿久。



「さあ阿久様、今夜は何にしますか?和食、洋食、それとも…このわ・た「よし永瀬人ひとり丸ごと入る鍋持ってこいテメーを煮込んでやる出来るだけ長い時間をかけて苦しむように煮込んでやる」

「………和食にしまーす…」



目が据わった阿久を見た永瀬は、冷や汗を流しながら来た道を折り返しダッシュした。阿久なら本気で煮るからな。大体阿久に冗談なんか通じないんだからだめだって。いや待てよ、永瀬ならあれきっと本気で言ってる

ちなみにこのやり取りをどこでしていたかってそりゃ大広間だから、いつのまにやら盛大な阿久ファンにまわりを占拠されていた。ねえ、俺のファンはいないの?俺のファンは!







話者と日常




阿久の格好良さって一体何だ、ぜひとも俺に教えてほしい



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