どうやら、たった数年で街ってのは変わるもんらしい



「こりゃまたご丁寧な挨拶」

「人数多くない?やる気失せるんだけどサイのせいで糖分不足だし」

「黙っとけどっちにせえやらなあかんねん、ほれ飴」



懐かしさの残る建物の前に広がるはものすごい量の敵っぽい人たち。ピストル、ピストル、ピストル……あ、奥の方に大砲。だから駄目だってば特に飛び道具。俺は飴を口に放り投げて戦闘体制に入った。いちご味。



「話者かもしれんぞ!気をつけるんだ!」

「なーに、おっさん分かっとるやん」

「な…いつの間に……ぐあっ」

「隊長!」

「大丈夫大丈夫!心配せんでもおっさんは全治1ヵ月や」

「さーいー、かっこつけてないで早く終わらしてよー」

「野郎相手にかっこつけたってしゃあな……お前、早ァ!」

「ほら、手伝ってやるから」

「時間いじらんでええわナメんなアホ!それよか今そんなことしとって後でバテても知らんで」



そう言ってサイは、くるくるの髪を風になびかせて空から細い電気を一人一人に落としていった。こないだめんどくさいとか言って一気にでかいの落としたら地元住民がパニックになっちゃって、長にめちゃくちゃ怒られたからな。成長したか



「ほい終わった、行くでー」

「飴」

「あ?」

「サイが道間違えやがるから糖分不足だって言ったじゃん」

「はいはいオレが悪かったですよ」



投げられた飴をキャッチすると、俺は気絶した敵の山から飛び降りた。中央から列車で十分くらいのここに来るまで二時間近くかかったんだ、サイの方向音痴のせいで!ほんともう、十二倍時間かかるとかありえない









―8








何千年もの間、多くの組織と一般住民とで成り立つこの国の中心部は中央総督庁で変わりはない。そしてそれを裏で支える特級組織が、駿河家と桐原家から成る駿桐同盟だった。他の国と同様統治はされてるが、ほとんどマフィアみたいな組織がいくつも存在するくらいなんだからもちろん治安がいいわけはない。一般住民の中にだって奴隷もいれば富裕層も「リューネー迷ってへん?これ迷ってへん?」

「遮んなし!もうちょっと喋りたかった!」

「はあ?なんの話や。それより道、迷ってんねんオレら」



長の話によると、あの時駿河と桐原を襲った組織の生き残りが何やら新たな組織を動かし始めてるらしい。俺とサイで全滅させたと思ってたのに、なかなかの想定外だ。しかもそいつら自分たちから攻めてきたくせに、俺らに殺られた仲間の敵討ちがどうのこうの言ってるとか。スパイに入った情報部の青木…青田?青汁?さんが言ってた。自分たちを棚に上げるのも大概にしてほしい、こっちの当主不在を狙っていきなり殺し始めたくせに全くもって意味がわからない



「…ってサイ!」

「んあ?」

「これ真逆じゃん!森なんか通んないのにここ森じゃん!」

「…あれー」

「あああもう!ボーっとしてサイに着いてった俺がアホだった!」



とりあえず森を引き返して逆方向の列車に乗るしかない。官服で列車に乗ると神隠し関連で質問攻めにあって大変なことになるのは経験済みだ。白い羽織と黒いワイシャツなんて、洋服だらけの一般住民の中じゃ目立ちまくってしょうがない。早く私の息子を探してだとか彼女はどこいったんだとか、俺だってサイだってそのために入庁したんだから知るわけないむしろ誰か教えてくれ。石炭のある無人車両に忍び込むと、サイが口を開いた。



「あん時まだ十歳やったもんなあ」

「………」

「何や」

「サイが真面目っぽい顔すると変」

「おい」

「まあでも、何で今になってそんな組織作ってんだろうね。俺たちがでかくなる前にやれば良かったのに」

「その生き残りオレらと同い年らしいで。対等に戦えるよう練習しとってんて、七年間。青野が言うとった」

「あ…青野か」



対等に、ねえ

結局あの日なぜ突然父さんたちが消えたのか未だに分からない。全く連絡つかないし全く情報がないから、おそらく神隠しなんだろうけど二人一気にいなくなるのは無しだよね。桐原家あっての駿河家、そのトップが神隠しに遭ったなんて情報が流れりゃB級組織だって攻めてこれる。なんせ残りは反抗期の子ども二人と俺の母さん、駿河の警備兵と桐原の平兵が十人ずつくらいだったし。物理的には何百対二十ちょいじゃどうにもならない



「ねえこれってさ、」

「…駿河家の跡地」



目的地に近づくにつれ、列車の外に懐かしい風景が現れた。地図をちゃんと見てみると、見覚えのある街名や通りの中に星印



七年前、父さんたちが忽然と姿を消した後両当主不在の駿桐同盟は何者かによる奇襲を受け、地方に修学中だったサイの兄貴と話者である俺とサイ、あとはその生き残り以外全滅するという世を揺るがす大事件が起きた

それが、







スントウジケン




列車を降りて七年ぶりの地を歩くと、見慣れた建物と門。門を開ければ矢が飛んできて警報音が鳴り、どこかしこから武装兵がぞろぞろとやってきた。冒頭。



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