俺とサイが犬猿の仲だとか思ってる人、いるんじゃない?そりゃ仲良しなんて思われてたら三日寝込むけど、この滅裂コンビを見れば俺たちが相思相愛だと言われてもまあ仕方ないかもしれない。吐くけどね。阿久と鎹の会話が成立してるのを見た人は呪われる、なんて世界一本当にありそうな迷信を知らない職員はいないはずだ ―11 「クソカス、報告書やっとけ」 「ねえ僕はカスじゃないんだけどいつになったら名前覚えるんだい?ああ、頭悪いから人の名前が覚えられないんだね同情するよ」 「あ?てめーなんぞカスで十分だろ存在的に」 「僕に勝った例もないくせにその根拠は一体どこからくるんだろうね」 「負けたこともねえ」 そういえば最近みんな中期任務で庁舎にいなかったから、この雰囲気久しぶりだ。うざったい感じ。え、あいつらを詳しく説明しろって?無理無理、時間の無駄っていうんだよそういうの。大体簡単に説明できるような人間じゃないからね彼ら。外見も性格もめんどくさい。ものすごく端的に言えば、鎹はいっつもにこにこしてて阿久は眉間にしわ寄ってる。対。あとは…鎹が黒髪で長くて阿久は左側の髪の毛をなぜかピンで留めてる。理由は知らない。俺がここに来たとき既にそうだったし。もういい?どうせそのうち嫌でも分かるって。阿久の髪色?そんなん知らなくたってテストに出ないから大丈夫だよ! 「おーおーやってんなあ!アキュウ、カスガイ、やーっと帰ってきたか」 「班長、久しぶり」 「はっはっは!元気で何より!それよりお前さんたち、正面から帰ってきたんじゃなかったんか?」 「何言ってんだ、俺様が北から入るわけねえだろ」 「僕が正面玄関から入ったらファンのみんなで混雑してしまうしね」 「あ?誰のファンだよ」 「僕に決まってるだろう」 「自意識過剰なんだよ変な髪型しやがって」 「阿久に言われたくないな、ピンなんかしちゃってチャームポイント?」 「ピンなめんなよ」 「君をなめてるんだよ」 どうやら情報部の見間違えらしかった。何見間違えってそのありえないミス!こんなわかりやすい二人組間違えるとかないでしょ、職員相当疲れてんじゃん。確かに情報部人数少ないし、最近ほら事件多いし、人員増やした方がいいと思う。今中央庁に必要なものは情報部員とプーのぬいぐるみだ。よし長の誕生日にプーあげよう、プー。 「それにしてもいやあ、元気で何よりだな!はっは!」 「おい濱口、酒臭えぞ」 「また朝から飲んでたのかい?」 「がっはっは!飲むか?お前らも飲むか?ほれ」 若干酔っ払った濱口班長は二人に無理やり缶ビールを持たせ、開けるように勧めた。鎹は元々下がってる眉をさらにハの字にさせていた。それさっき班長がめちゃくちゃ振りまくってたビールじゃないのかな……あ、やっぱり爆発した。笑ってる。阿久が逃げる班長を追いかけ始めた。あのコンビ、最近やっと成人の仲間入りを果たしたってのにやってることが俺らと何ら変わんない。綿貫を見習え、綿貫を。 「阿久、まず顔拭いたら?」 「待てえええ濱口このやろォオオ」 「わっはっは!」 ちなみに俺とユーラはこの様子をげんなりしながら傍観していただけである 滅裂コンビ その後サイのところへ帰ると、たんまりあった資料と報告書が綺麗さっぱり無くなっていた。どうやら全て終わらせたらしい。ユーラの威力はマグニチュード八点八。 |