俺は夢を見るのが下手だ。思い出したくもない昔の出来事を夢で見て、うなされながらがばっと勢いよく起きれたらなんて楽なんだろう。生憎、俺は目がさめている時にはっきりと思い出してしまう。それもかなり鮮明に



「…行こう、中央に」



せめてドラマのワンシーンのように雨でも降ってくれれば、俺たちの紅もサイの涙も洗い流してくれたかもしれないのに

その日は、快晴だった









―5








「わーたーあーめー!」

「はいはい」



朝一番、俺は自分の出しうる最高速度で食堂に向かった。わくわくし過ぎて配膳の始まる30分前に飛び込んでしまったが(食堂に入るときはもちろん扉の前で急停止した。これで止まりきれず扉をぶっこわして入ったもんなら、きっとまた糖分禁止令が発令されただろう)、ユーラは眉をへの字にさせて微笑みながら、用意されていたらしいふわふわのわたあめをくれた。糖分禁止令を出されてから八日目、ついに!ついに俺の口に愛するわたあめが……!ああもう死ねる。うまい。やばいうまい。わたあめ開発した人尊敬する。うああしあわせ!なんか俺って単純!



「じゃ、そういうわけでハイ」

「ん?」



………忘れてた
朝食と同時に渡されるぺらっぺらの紙。特定仕事とか任務が入った時はその日の配膳担当(まあほとんどユーラだけど)から仕事内容の書かれた紙が渡されるわけだけど、今日は糖分が取れるうれしさですっかりぽっきり忘れていた。最悪だ。浮かれ気分が一気に鬱モードへと突入。駿河流祢、三十のダメージ!



「…うえ、しかもまたサイと?」

「らしいね」

「やだ!もう3回目だし!」

「任務なんだからしょうがないっしょ。運命だよ、運命」



そんな運命認めません!この前の記録なんかあの方向音痴のせいで3倍長くかかったし、その前だって女の子の後ろついてまわっては庁の経費無駄使いして俺まで減給の巻き添えくらったし、もう、いいことないんだってば!



「せめて単独とか……!」

「よろしくね」

「………」

「よろしくね」

「はい」



俺はまたしてもこないだのフリスビー事件(少女の投げたフリスビーが壁にめり込むという恐怖はきっと体験しないと分からない)を思い出して冷や汗と共に肯定の意を示してしまった。恐るべし遊衣クオリティ。



「あ!それと、今回は発つ前に司令部寄って」

「司令部?またなんで」

「さあ、とりあえず長が呼んでるらしいから」

「んー、分かった」

「じゃあサイ起こして行ってきてねー」

「…あーい」



一週間振りだからと言ってわたあめをもう一本(八本目)もらってから、サイを起こしに食堂を出た。あのふざけた天然パーマをわざわざ俺が起こしに行ってやるなんて、泣いてお礼を言ってもらいたいね。ま、久々にあの早朝爆発ヘアーを思いっきり笑ってやるとしますか!







フラストレーションからの脱出




あ、カメラ持ってかなくちゃ



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