「今だ!撃ち落とせ!」

「おい、なんか増えてんぞ!」

「援軍だ!リューネ、範囲を広げろ!」

「えーもう疲れぶぎぅ!やりゅ!やりゅきゃらはにゃし、て、ぶほわっ」

「リューネ、ユーラに言「あーあーあー!はいはい!やるってば!何キロ広げればいいの!?」



糖分禁止期間が延びるのはごめんだ









―4








エレベーターの扉が閉まった瞬間に鳴った衝撃音、あれはまさに大砲の音だった。庁に大砲を撃ってくるなんて、頭のいい組織かアホの組織かのどちらかだ。で、あのおじちゃんがスパイなくらいだからきっとあれはアホの組織だと思う。多分ね。なんでおじちゃんがスパイだと分かったかって?そりゃ簡単だよ。敵襲をもって俺に避難しろなんて言ってくるのは、冗談の利く老舗社員かアホのスパイかのどちらかだ。で、真剣に助言してきたおじちゃんはアホのスパイというわけだ。演技派も時に墓穴。



「また増えやがった…めんどくせえ、おいリューネ!もう範囲六キロにしろ!」

「ねえ濱口班長、六キロがどんだけ疲れるか知ってる?それでなくても20分以上休みなしでやってんだからね!」

「ユーラ」

「ははは六キロなんてお手のもんさ!任せろ!」



なんでこんなに酷使されてるかというと、あごひげのおじちゃんに言った通り俺が話者だから。この国には六人の話者というなんだか変な能力を持った人間がいて、俺の場合は時間とお話が出来るってわけだ。やめてほしいよね、そういうファンタスティックな感じの能力。実際「あ、おはようございます」「朝ご飯何食べました?」なんて話したことはない。当たり前だ。ただ時間を操れるってだけ(こんなことを言うとファンタジー映画の主人公っぽいけど、現実はそんなかっこよくなんかない。変人扱いだ)。どうせならもっと地味な能力ほしかったし。たとえばほら、足がめっちゃ速いとか?勉強しなくてもめっちゃ頭いいとか?



「向こうが弾切れしたぞ!狙撃班は標準を合わせろ!俺が合図したら砲撃だ!」

「イエッサー班長!」

「はー、疲れた」

「何言ってんだリューネ、まだ解くなよ」

「え、まだやんの」

「瞬殺で終わらせっからあと少し頑張ってくれ」

「…わたあめ一週間分ね」



今俺が何をしてるか、相手側の時間軸をずらしてる。あっちに関わるものの時間だけ遅くしてるから、飛び道具は空中を浮遊するだけで何の攻撃力もない。それを狙撃班が撃ち落とすんだ。弾が弾を撃ち落とす、向こうは自分たちの時間軸が変わったとは感じてないから、こっちがすげー気持ち悪い速さで動いてるように見えてるんだろうな。ね、凄いっしょ?まず有り得ないよね、ふざけてるよね、ここの一般社員はこの能力を羨ましがるけどやめたほうがいい。アクション漫画でも読んでみりゃ分かる、大抵こういう変な能力持ったやつってまともな人生送らないから



「はい終了ー」

「お疲れさんでーす」

「久々の実践だったな」

「リューネもお疲れさん!ありがとな、お前が起きててくれて助かったよ」

「寝てれば良かったー」

「あっはっは!もしそうだったら庁舎はドーンバーンだぞ、立て直しにお前さんの力を使うことになる」

「うわ、それのが嫌だ」

「はっはっは!」



冗談じゃない、こんなバカでかい建物直すのにどんだけ時間巻き戻せばいんだよ。めっさ疲れる。濱口班長は狙撃班に解散と声をかけて、どかっともふもふのイスに座った。

撃ち落とされた弾とか槍とかその他諸々は地面に着く前に粉になるから、庁舎のまわりは今ホワイトダストで何も見えない。粉になるのは、大砲とかでかいやつが地面にそのまま落ちたとき地震になるからそれを防ぐため。んなものがなんで粉になるかって、それはうちの研究班が頑張ったから。構造なんて知らない、なんせ俺は運の悪いことに勉強しなくても勉強できる能力なんて持ってないからね



「ワタヌキはどっか行ってんのか?」

「確か昨日北に行ったと思う」

「なんだ、ホワイトダストはいて貰おうと思ったんだがなあ。自然消滅待つしかねえか。今日は早朝ランニングお預けだ」



外の組織はいつの間にか姿を眩ましていてそこにはもう誰もいなかったけど、俺たちは別に追ったりしない。無駄な殺生はしない主義なんだ。いいことだよね







話者と早朝




変な能力を持った奴がろくな人生送らないのは、もちろん俺たちだって例外じゃない



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