初めて苗字を見たのは朝練終りでバドミントン部の体育館を通りかかったときだった。
コートを自由に飛び回り、何よりシャトルに飛びつきスマッシュが決まったときの笑顔が強烈に印象に残った。あぁ。この子は本当にバドミントンが好きなんだなぁ。すげーかっこいいじゃん。って。なんとなく目が離せなかった。

「苗字先輩!今日副主将会ですよね!?あのーこの件なんですけど……」
『あーこの件ねー。なんとも言えないけど、赤葦くんに頼んでみるよー。』


練習終わりにそんな会話をしながら体育館から出る時、お疲れ様です!なんて言われて想定外すぎてうぉ、お疲れ様ー!と変な返しをしてしまったことを少しだけ後悔した。

「木兎さんどうしたんですか?もうHR始まりますよ。」
「……赤葦……。あの子、副主将の子。名前なんて言うの?」
「あぁ。苗字さんですけど、それが?」
「いや!下の名前ー!」
「名前さんですけど。……まさか木兎さ「なー!なー!今日の副主将会ついて行っていい?」」
「え……いやなんでくるんですか?主将が参加したら意味無いですよね。ちゃんと報告しますから大人しくしてください。苗字さんに用事があるなら伝えておきますから。」
「いや!自分で言う!」
「……。わかりました。じゃあ教室戻ってください」

わかった!とだけ返事をし教室に戻った。
元々勉強は得意ではないのであまり聞いてないのだけれど、今日は朝見た光景があたまから離れずよけいに聞けていなかった。

昼休みになりいてもたってもいられず2年の教室に行ったのだが、赤葦は既に副主将会に行っており留守だったので教室前で待つことにした。
それから程なくして赤葦と隣に苗字さんが居るのが目に入った。

「あ!赤葦ーお疲れさん!」
「お疲れ様です。もしかしてずっと待ってたんですか?まぁそんな気がしてましたけど。あ、苗字さん。この人が木兎さん。」
『初めまして!って朝に会いましたよね。バドミントン部2年の苗字名前です。』
「そうそう!朝見たんだけど、すげーつよいんだな!それで、なんか頭に焼き付いてわすれらんなくてさ。だから……そのー連絡先教えて!お友達になってください!」
『えっ。あ、は、はい大丈夫ですよ。じゃぁLINEで』
「ありがとー!じゃぁ今度連絡するから!じゃーまた!」


自分なりに頑張った!よくやった俺!と自分を鼓舞し上機嫌で教室に戻った。あ、赤葦に声かけないで戻ったけどまぁいっか。


「……なんかごめんね。あの人いつもああだから。迷惑ならいつでも言っていいからね。」
『え!いやいやいや大丈夫なんだけど!あー。どーしよう!赤葦くん!あたし連絡先聞かれたの初めてなんだけど!うわー!しかも木兎さんに……。あたし今日命日か……』
「え。落ち着きなよ。……まさか苗字さん『いやー!言わないで、言わないで!あー次の授業の準備しないとなぁー』」

「……いやわざとらしすぎるでしょ」


その後赤葦の予感は的中し二人が付き合い始めたのはわかり易すぎるくらいだった。

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