※現パロ高校生





聖バレンタインデー。
女の子が好きな男の子にチョコを贈って告白する日。
本来はバレンタインさんが処刑された日だってのにいつの間にやら日本の常識はバレンタイン=告白の日になっていた。最近では友チョコも流行ってるから最早お菓子を作って配布する日なんじゃないかと思う今日この頃。

「あ、あの…!チョコ、本命なんですけど…受け取ってください!」

…と思っていたら、帰り際、駐輪場の脇の死角になりやすいところでまさかの告白場面に遭遇してしまった。へぇ、やっぱり告白する子って本当にいるんだな。
俺が今いる所からでは女の子しか見えないから、告白されてる奴がどれだけイケメン君なのかを確認するために静かに移動する。

「!」
「……ありがとう。でも、俺ほかに好きな人いるんだ。ごめん」
「いいんです!気持ち伝えられればそれで!受け取って貰えるだけで嬉しいんです!」

おそらく一年であろう女の子が顔を真っ赤にして精一杯の気持ちを伝えている相手は、そいつが入学してからやたら俺に突っ掛かってくる二年の池田三郎次だった。
女の子の、ふるふると震える手にある可愛くラッピングされた箱を優しく受け取ったそいつは、俺の前じゃ絶対見せないような穏やかな微笑みを浮かべて、もう一度ありがとうと言った。女の子はそれを聞いてぱぁと明るく笑うと、同じようにありがとうございましたと頭を下げて反対方向へと走り去る。
暫くその場に立っていた池田が、くるりと振り返ってこっちに歩いてくる。至近距離にいたせいで逃げることも出来なかった。

「!あんた……」
「………よぅ、色男」
「?!見てたのかよ!悪趣味だな!」

ボッと音が聞こえそうなくらい一気に赤くなった池田にもやっとする。もやっと?なんでだ?
沈黙が流れる場にいたたまれなくなった俺はからかうように笑う。

「悪い。タイミング悪かった。でもお前、好きな奴いたんだな」
「!!!!」

俺のその言葉に一瞬驚いて泣きそうな顔をして、すぐにいつもの憎たらしい表情に戻る。今の顔はなんだ。俺なにか酷いこと言ったのか?
頭にはてなマークを浮かべていたら、本当にすぐ傍まで池田が迫っていて、

「なにそれ、チョコも貰えないモテない男の嫌味かなんか?」

にやりと笑って手に持っていた箱を見せ付けてくる池田。俺は思わず殴っていた。

「ってぇ!図星か富松!」
「先輩つけやがれ池田。俺だって貰ってない訳じゃねーし!」
「はぁ?!誰に!」

よろけて尻餅をついていた池田が、俺の言葉を聞いてバッと立ち上がり俺に詰め寄る。さっきからなんかこいつの反応変だ。何をそんなに過剰反応してるんだ?敵対心持ってる俺にはバレンタインも負けたくないのか?

「クラスの女子とか委員会の後輩とか迷子とか」
「お前の委員会って後輩男しかいないだろ?!つーかなんで迷子が入ってんだよ!」
「敬語使え阿呆!後輩も迷子も毎年くれるんだよ。別に意味はねーだろ」
「……っ、あんたから、あげたりするんスか」
「いや別に?なんで男からやらなきゃなんねーんだよ。くれって言われたら別だけど」
「!!!じゃあ俺がくださいって頼んだらくれてくれますか」

何言ってんだこいつ。
言いたかったけど、目の前のこいつがあんまりにも真剣な目をしてたから、頷くことしか出来なかった。そんなに欲しいのか。違うなにかがある。何がしたいんだ。

「くれるなら、ホワイトデーには誰にも負けない愛をお返しします。富松先輩」
「なっ……」

心底嬉しそうな顔をして、笑って、池田は目の前から消えた。

「(普段、あんな顔しないくせに)」

うっかりドキッとしたなんて誰にも言えない。










VD池富
オチが迷子です



おまけ





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