『今日も隣村行くよ、作も行くかい?』
『となりむらいったらまごへーいる?』
『勿論さ』
『いく!』

『なぁまご、オレおっきくなったらまごへーおよめさんにするからな!』
『ダメだよさく、およめさんはおんなのひとしかなれないんだ』
『じゃあまごへーはおよめさんになれないのか…?およめさんになったらずっとまごへーといっしょにいられるとおもったのに』
『けっこんすればいいんだよ』
『けっこん?』
『しょーらいをちかいあうんだ。とわのあいをちかいますかって』
『とわ?』
『ずっと、えいえんにってことかな』
『ちかう!まごとずっといたいから!』
『うん、ボクもだよ』








寒さが厳しくなってきた季節。学園は長期休みに入る。
正規の授業は今日で終了。補習がある者がいれば自主的に勉学や特訓に励むものもいる。家の都合で早々と学園を後にする者、未だに帰り支度が済まないで焦っている者、帰らない者。
三年長屋も例外ではなく、がやがやと賑わっていた。

「あれ、作兵衛たちまだ支度してないのか」
「おー藤内」

作兵衛、左門、三之助の部屋にひょいと顔を出したのはは組の二人。寒がりな作兵衛に寄り添うように固まっていた三人に苦笑した藤内は普段通りの室内に首を傾げた。

「私たちはまだ帰らないのだ!」
「え、左門達も?」
「は、数馬も?」
「てゆーか俺と数馬が」左門がにぱーと笑うと数馬が驚いた風に言う。つまり、ろ組の三人とは組の二人はまだ残ると言うわけだ。
忙しくないと理解した二人は室内に足を踏み入れ固まっている輪に入り込む。

「何、三人とも残るの?」
「いんや俺と左門は親が迎えに来る。だから親待ちなの。来なくてもいーのになぁ」
「来ねーと帰れねえだろが」
「藤内たちは?」
「俺はちょっと予習復習してから帰ろうかと」
「僕はまだ保健の方で仕事あるんだ」
「大変だなー」
「作兵衛は?」
「うぇ?」

急に振られた話題に作兵衛は変な声を出してしまう。えーあーうー等と煮え切らない返事をしている作兵衛に藤内と数馬は首を傾げた。

「作兵衛ずっとこの調子なんだ」
「教えてくんねーの」
「へーなんで?作ちゃんなんで?」
「うー…いいだろ、気にすんなよ」
「気になるだろ!」

むぅと膨れて話さない作兵衛だが、寒がりな自分を囲う4人に迫られ困惑していた。やれ擽れやれ引っ張れだ騒いでいると、不意に部屋の戸が開かれる。

「何を騒いでいるんだ」
「孫兵!」

戸を開いたのはい組の孫兵。抵抗する作兵衛に乗り掛かる4人を一瞥してから溜息をつく。
孫兵は既に帰り支度を済ませていた。その孫兵が何故この部屋に訪れたのだと中にいた者は首を傾げる。

「どうしたんだ孫兵!帰るのか?」
「あぁ…お前達は帰らないのか」
「まーなー。何か用?」
「……そこの、今お前達が潰している奴に用があるんだ」

四人の視線が作兵衛に向く。

「まだ支度してないのか」
「…帰るだなんて言ってないだろ」
「往生際が悪いね」
「るせぇ」
「あの…何の話?」

四人を放置して会話する孫兵と作兵衛に思わず藤内が口を挟む。作兵衛は言いたくなさげに口をつぐみ、孫兵は無表情で淡々と返した。

「富松が帰らないってぐずるから引き取りに来ただけ」
「「「「…はぁ?」」」」

四人の声は見事に揃った。
孫兵と作兵衛は普段そこまで仲良くもない、接点のない二人である。たまに作兵衛が孫兵のペット捜索を手伝うことはあるが、何故そんな孫兵が作兵衛を引き取るのか四人には疑問が浮かぶ。

「孫兵だけで帰れよ!」
「年初めくらい顔出せって言われてるんだろう?」
「だから孫兵だけで…!」
「作兵衛」

孫兵の声のトーンが下がり、作兵衛は黙る。四人はいい加減作兵衛の上からどいて孫兵の回りに正座した。そして思い出す。先日告げられた孫兵と作兵衛の関係を。

「幼なじみだからか」
「顔出せって作兵衛の親からってこと?孫兵作兵衛の親と仲良いの?」
「なんで作は帰りたくないってぐずるんだ?」
「作ちゃんの親ってどんな?」
「…………」

四人の質問責めに孫兵は溜息をついた。こんなことがつい先日あった気がする。

「富松の親とは知り合いだよ。それなりに仲良いとは思う。富松が帰りたくないのは親が煩いからかな。いい人だよご両親とも。さぁ富松、いい加減に支度しろ。引きずってでも連れてくからな」
「…………」

他の四人の質問せめをさらっと受け流し孫兵は作兵衛を一瞥する。それまでぐずっていた作兵衛もいよいよ諦めたのかのろのろと動き出した。
それを確認した孫兵はふぅと息を吐いてから複雑な表情を見せる四人を見る。

「何か言いたいことでも?」
「いや…まぁ言いたいことは多々あるけどね」
「作兵衛と孫兵の家に行きたい!」
「来んな!」
「なんでだ作兵衛!」
「いーから来んな!おら孫兵行くぞ!ぜってぇお前らは来させねーからな!また新学期に!」
「あっ逃げた」

左門の言葉に怒鳴った作兵衛は荷物を持って逃げ出すように部屋を出た。左門は不満そうに顔をふくらませる。孫兵は軽く四人に挨拶をして、早足で歩く作兵衛を追い掛けた。






「富松」
「……………」
「富松。…おい作兵衛」
「…………」
「まだ怒っているのかい?」
「別に」
「あいつらが来る訳じゃないんだからいい加減機嫌直しなよ。これからあの家に帰るんだろう」
「それがやなんだよ!親兄弟にゃいつ婚礼あげんだだとか言われるわ周り近所にゃ夫婦扱いされるわ…帰りたくもなくなるってんだよ」
「今更だろ?原因作ったのは作兵衛じゃないか」
「お前もだ!」









尻切れトンボ……。
孫富幼なじみ設定ですー。早く結婚しろお前ら。多分いつか残りの四人は作ちゃんの村に推しかけて来る。んで原因知って怒り狂うでしょう笑



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