※ほぼ三年で不思議の国のアリス
※100%パロディです。妄想注意
※富松が女装してたりします





穏やかな昼下がり。
作兵衛は、木の下の木陰で読書している兄の隣で寝転がりうとうととまどろんでいた。さわさわと気持ちのいい風が作兵衛の長い髪をなびかせる。

「作、寝るなら家に入るか?」
「んー…ここ気持ちいいから嫌…」

作兵衛の目が閉じそうなことに気付いた兄が作兵衛の頭を優しく撫でる。それは余計に作兵衛の眠気を誘い、完全に意識を落とした。




「……と!早く!女王様に怒られる!」
「…ん……?」

気持ちよく寝ていた作兵衛を起こしたのは聞きなれない焦ったふうな声と駆ける音だった。むくりと起き上がり兄がいるであろう横を向くと兄も読んでいた本を投げ出して寝ていた。苦笑した作兵衛が次に見たのは声のしていた方。

「うわー遅れてしまう!!」
「!?!?」

その声の主は作兵衛の予想を超えるような容姿をしていた。
チェックのベスト、腕の出ない程長い袖のシャツ、チャラチャラとチェーンのようなものがついたネクタイ、膝下の半ズボン。低い位置で結ばれた長髪、小さなハット。そして首から下げて必死に確認している時計。そこまではまだ納得できた。いや、作兵衛の周りにはあまりいないタイプのものだが、納得はできた。唯一どうしても目を疑ってしまうのはハットの他に頭についているもの。

「うさぎの…耳?なんだ、あいつ…」

普通の人間には絶対についていないもの。真っ白なうさぎの耳。それは作兵衛の好奇心を擽った。そういった趣味の人なのか。急いでいるそのうさぎ耳を追いかけて走りだした。

「(兄さんも寝てるし、日が暮れるまでに帰ればいいよな)」

何故かすごく気分が高まっている。
うさぎ耳は暫く走ったところで木の後ろに入った。作兵衛もそれを追う。

「…あれ?」

追いかけた目の前にうさぎ耳はいなかった。隠れるには難しい木と木の間で、姿を消していた。

「見間違い…な訳、ねえよなぁ…?っと、わぁ?!」

首を傾げて一歩後ろに下がった瞬間、作兵衛は身体のバランスを崩した。足が穴にはまったのだ。咄嗟に後ろを見た作兵衛の視界には人が一人入れるようなくらいの大きな穴。
そのまま、作兵衛は落ちて―――


「わあああああああああああ!!!!」

穴は驚くほど深かった。驚くほど、なんて言っていられないほど作兵衛は焦っているが。穴の底が全く見えない。どこまで落ちるか分からない。作兵衛はその恐怖と戦っていた。

「誰か止めてくれええええええ!!!」

しかし終わりは直ぐに訪れた。ぶわっと下から風が吹いたかと思うと、胃が浮くような衝撃の後急降下は止まった。作兵衛の周りに風が纏い、ゆっくりと下がっていく。暫くするとぼすんと大きなクッションのようなものの上に落ちた。

「……ふ、はああああああ」

助かった安堵から、作兵衛は手をついて大きく息を吐く。と、違和感があった。自分が先ほどまで来ていたのは茶色のズボン。目の前に見えるのは萌黄。そのうえ生地が多い。ふわふわしている。レースも見える。そして感じる足の間のスースーする空気。

「な、なんだこれ!!?」

いわゆる、スカートを履いているのだ。結んでいたはずの髪もほどけている。それだけならまだしも、頭には大きなリボンが付いている。

「なっ、なんで!うぇっ、てか、どこだよここ!!」
「不思議の国、だよ」
「!?」

混乱して叫ぶ作兵衛のすぐ後ろで声がした。バッと後ろを振り返るとそこには一人の男が立っている。肩を出したダボダボのボーダーの服、何故か袖部分は小さなベルトで止められ手が出ていない。首には鎖が途中で切れている首輪をして、やはりさっきのうさぎ耳のように目の前の男にも耳が生えている。こちらは猫だが。背後にゆらゆら揺れる尻尾も見える。

「だ、誰だよお前…」
「俺は猫だよアリス。困ってるアリス可愛いね」
「アリス?何のことだ?」
「アリスはアリスだろ?早くここから出ようぜ」
「ちょ…!」

ニヤニヤと笑う、自分を猫だと言う男は未だに状況を理解出来ていない作兵衛の腕を引き立たせた。そのままろくに抵抗出来ない作兵衛を引っ張って歩き出してしまう。

「おい!なんだよ何処行くんだよ!お前誰だって!アリスってなんだよ!」
「アリスは知りたがりだな。いーよ教えてあげる。向かうのは森、俺は猫、アリスはお前」

クスクスと笑う猫は答えになっていない返答とした。作兵衛は余計混乱する。

「俺はアリスなんて名前じゃねーよ!」

他にも色々と気になる事は多かったが名前を間違えられているのは気に食わなかった作兵衛は怒鳴った。すると猫は急に立ち止り、やはりニヤニヤと笑いながら振り返る。

「じゃあ、アリスはなんて名前なんだ?」
「っ…俺は作兵衛だ!」
「ふぅん作兵衛?そっか作兵衛か。作兵衛さくべー作ちゃん。可愛いね」

二コリ、それまでの人を馬鹿にするような笑い方でなく心底嬉しそうにその猫は笑った。可愛いと言われるのは嬉しくないはずなのに何故か作兵衛は顔に熱が集まっていく。
直ぐに元のニヤニヤ顔に戻った猫は再び前を向き歩き出す。今度は作兵衛も何も言わずに大人しくついて行った。






ついったで妄想していたアリスパロです。
アリス→作兵衛で作総受け。とりあえずなんとなくわかるかなーと思いますが白うさぎと猫は名前出してないので伏せます…まぁ分かるよね!語りまくってるからね!!
ほんと始まりの部分です。続きます。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -