※孫兵と作兵衛が幼馴染み設定




夕暮時の静かな三年長屋。
静寂を破るようにどたどたと忍者のたまごにあるまじき足音を立てながら走る音が聞こえてくる。その足音は戸惑いもなく一つの部屋の前で止まりやはり大きな音を立て襖を開けた。

「ただいまさくべ!」

足音の主―神崎左門は、そう声をあげながら部屋の中にいる人物が予想していた者と異なっている事に目を丸くした。いや、予想の人物はいた。その人物の状態ともう一人の存在が左門を驚かせたのだ。

「…………」
「あれ、左門なにして…」

襖を開けた状態のまま固まっていた左門の後ろからたまたま通りかかった三之助がひょっこりと顔をのぞかせ、やはり同じように固まる。
そんな二人に動じることなく、当事者であるはずの富松作兵衛は、もう一人の当事者伊賀崎孫兵の膝で眠っていた。二人の反応を静かに見ていた孫兵が漸く口を開く。

「騒ぐな。起きるだろう。あとここは俺の部屋だ」
「いや、だって…何して…」
「?何か問題あるか?」

寝ている作兵衛の髪を梳きながら孫兵は首を傾げる。
すると左門と三之助が部屋の前で固まっている事に気付いたらしい藤内や数馬もやってきて、前の二人のようにその場で固まる。

「何なんだ皆して。富松が起きるじゃないか」
「それが驚いてる原因だ!なんで作兵衛が孫兵のとこで寝てるんだ!」
「藤内の言うとおりだ!お前らそんな仲良くないだろ!」
「膝枕うらやましい!」
「三之助正直すぎ!」

ぎゃいぎゃいと部屋に入らず廊下で騒ぐ4人に孫兵は小さな溜息を吐いてこの喧騒にも関わらず熟睡している作兵衛の頭を撫でた。

「お触りダメ!」
「…いや富松自信俺の膝なんだけど」

びしぃ!と三之助に指をさされる孫兵。理不尽な注文に困惑していると漸く左門が部屋へ入ってきた。それに続くように全員が足を踏み入れ、孫兵と作兵衛を囲むように座った。

「………何」
「質問です孫兵さん」
「なんで伊賀崎のとこに作兵衛が来るんだ?」
「作と孫兵はそんなに仲が良かったか?」
「その状況になった経緯を詳しく教えてください」
「作のほっぺ突いていい?」

ここぞとばかりに質問責めにしてくる4人を一瞥してから孫兵は口を開く。

「なんで…?なんでと言われてもこれが普通だよ。仲は今君達が見てるかぎり。迷子捜索と委員会に疲れた富松がここに来ただけだ。頬突いて富松起こして怒られるのは次屋だけど」
「んー……」

けろっとした風に孫兵が言ってのけると、今まで大人しく寝ていた作兵衛がもそもそと動き出した。気付いた孫兵は普段の無表情が嘘のように優しげな顔で作兵衛の頭を撫でて問う。

「起きたかい?」
「あー……ん。はよう孫…」
「おはよう作」
「「「「………」」」」

その二人の甘ったるい空気に残された4人は何も言えなくなっていた。頭を撫でる孫兵に擦り寄る作兵衛はまるで自然だ。

「……ん?」

ぱちり、瞬きをした作兵衛は孫兵の他に自分に向く視線に気づく。
孫兵に擦り寄っていたままの体制でゆっくりと顔だけ視線の方へ動かす。目線の先には同じクラスの迷子共とは組の二人。真ん中にいた左門と目が合いみるみる蒼白になる作兵衛。
暫く青くなったまま固まっていた作兵衛は急にバッと飛び上がると周りに座る4人を飛び越え走り去っていった。遠くで「ばかやろおおおおおお!!!」と叫びさるのが聞こえる。

「あーあ逃げちゃった」
「「「「まごへええええええ」」」」
「うわ、何」
「何あれどーゆーこと!!?」
「俺でもあんな作兵衛見たことないんだけど!」
「なんなの!お前らの関係!」
「は、幼馴染みだけど」
「「「「はあああ?!」」」」




なにか問題でも?







孫兵と作兵衛が幼馴染みだったらな妄想に同意してくださった上リクに答えてくださった瑞樹さんにお礼にならないお礼!
うちの幼馴染み孫作、普段はそんなべたべたしないです。でも気付くと近い。あと名前も通常名字呼び。もう一人孫兵のこと伊賀崎って呼んでるのは藤内。
まだまだ語りきれない…!!



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -