今日は委員会が長引いたせいで少し戻るのが遅くなった。
三之助も左門も早く委員会が終ったらみたいで今日はもう風呂入り終わってる(どうやら藤内と数馬で面倒みてくれたみたいだ)。
重い身体を引きずって風呂へ向かう。汗やら汚れやらでボロボロな身体を早く洗いたい。
もう人気もないだろう。そう思いながら浴室の扉を開くと珍しい人影があった。

「伊賀崎」
「……富松」

風呂場でこいつに会うのは珍しい。普段迷子どもを連れて入る時には会ったことがなかった。人嫌いなこいつのことだ、人気のない時間帯狙ってるのがなんとなく分かる。

「…………」
「…………」

………気まずい。いや、だってあんまり伊賀崎と会話しないし。左門が話し掛けるところに居合わせることは多々あっても会話に参加したことなんてない。別に会話しなきゃならない訳じゃねえけど二人しかいない場で無言はちっとばかし辛いもんがある。

「富松がこの刻にいるのは珍しいね。委員会かい?」

ぐだぐだと思考を巡らせながら湯をかぶっているとあっちから声をかけてきた。
驚きすぎて目が点になってた俺をみて伊賀崎が笑う。あ、こいつの笑った顔初めて見たかも。

「なんだよその顔」
「いや…だってお前から声かけてくるとは思わなかったし…」
「ああ、まぁ普段は会話らしい会話しないからね」

くすりと笑う。今日はなんだか珍しいことばかりだ。俺が、伊賀崎と、こんな話してるなんて。

「…お前は俺みたいなのなんて興味ないんだと思ってた」
「そんなことない。僕は割と富松のことは気に入ってるんだ」
「はぇ?」

思いもよらない台詞が聞こえた。
あの毒虫野郎でペット第一のこいつが俺を気に入ってる?なんだそれは天変地異の前触れか?それとも俺のこと珍しいな動物だとでも思ってんのか。

「富松はジュンコを怖がらないし生き物に優しいし小屋の修理もしてくれるしね。この間みーちゃんを小屋に戻してくれたの、富松だろう?」
「優…っ、つーか見てたのかよ!」
「偶然通りかかったんだ」

周りが騒ぐほど俺はジュンコを怖いと思ったことはないし、生き物は元々好きだ。普通のことだとは思うけど、そうかこいつにとってはそれが好感度に関係するのか。
なんとなく、こいつが分かった気がする。

「お前って割と分かりやすい奴なのな、孫兵」
「!…君ほどではないよ?作兵衛」

目を見合わせて笑う。
なんだか仲良くなれそうな、そんな気がした。







[お風呂で2人っきりになる甘々な孫富]


(迷子に疲れたらいつでも生物小屋おいで。作兵衛ならいいよ)
(………おう、ありがとよ)






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