※六年→四年 三年→一年
※保健と用具は三年間後輩がいない設定





「留三郎!!!!」

伊作が俺の名前を大声で呼びながら駆けて来たのは夕暮時。
その日は新一年の委員会発表があった日だ。俺も委員会で呼び出された後だった。

「と、留三郎!!ききき聞いてくれ!!!」
「落ち着け伊作。何となく言いたい事は分かる」
「「委員会に一年が入った」!!!」

興奮する伊作に彼がはしゃぐ要因であろう理由を口にする。それがものの見事に重なってしまい、思わず顔を見合わせて笑った。
少し落ち着いた伊作を隣に座らせる。

「やっぱりなー。お前のその喜びようは絶対これだと思った」
「そーゆー留三郎だって嬉しそうじゃないか。君のとこもかい?」

俺は問いかけには答えず、親指をたて笑った。理解した伊作も同じように親指をたてる。
俺の用具委員会と伊作の保健委員会は、俺達が入学してから未だに後輩がいなかった。俺も伊作もお互い口には出さなかったけど今日の発表が待ちどうしくて仕方がなかったんだ。
一年は真新しい(でも少し汚れた)制服を着て、緊張気味で先輩に連れられてきた。ちょこちょこと歩く姿が凄く可愛いその子。意志の強そうなきりっとした目で俺を見て。

『一年ろ組、富松作兵衛です!』
『留三郎。お前が一番歳近いんだ、よく面倒見てやるんだぞ』

そう先輩に言われてすっごく嬉しかった。漸く俺にも後輩が出来たんだ!小さな声でよろしくお願いいます、と言った富松の頭を撫でてこちらこそよろしく!と笑った。


「やっぱりね、ジンクス通り新入生も不運みたいだよ。保健室来る前にすでに落とし穴に引っかかってた」
「俺のとこのは素直で真面目そうな子だったぞ」
「後輩ってさ、ちっちゃいね」
「……おう」







桜舞う木の下、俺は作兵衛と対峙していた。
俺が纏うのは慣れ親しんだ深緑の衣ではなく黒を纏い、作兵衛も萌黄でなく紫を纏っている。
俺は今日で学園を去る。

「初めて作兵衛と会った時、俺が来てたのが紫だったよな」
「……はい」

作兵衛が来てたのは水色。もうそんなに成長したんだな。
一人だけだった後輩は三人も増えて、作兵衛は先輩になってた。

「委員会、頼むな」
「はい」
「大丈夫、お前なら上手く出来るよ。俺の右腕なんだから」
「はい…っ」

俯いて震える作兵衛を抱きしめて、ありがとうと呟いた。視界がぼやけていく。震えてるのは俺だ。情けないけど、涙がとまらない。
無言で抱きしめていたら、作兵衛の手が俺の背中をポンポンと叩く。

「先輩からおそわったこと、全部、伝えていきます」
「さく…」
「だから、泣かないでください…っ、俺は、平気、ですから」
「さく…っ」
「本当に、ありがとうございました…っ!」

必死に言葉を紡ぎながら涙をこらえる作兵衛を、もっと強く抱きしめるととうとう泣きだしてしまった。
こちらこそ、ありがとう。
いつも傍にいてくれて。おかえりって迎えてくれて。
いつの間にか当たり前のようになってて、もう一言じゃ伝えられないけど…。
お前は、俺の、たいせつな―――





はじめての後輩

(大好きだ)
(…ありがとう)





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