※多分成長(五年くらい?)
※数馬が鈍感でわりと酷い
※やたら作兵衛が乙女
※数(→)←富



作兵衛がおかしい。
気付いたのは、本当につい最近のことだった。

何がおかしいって、僕への対応。
例えば目が合ったとき。カチンと石のように固まったかと思うとすぐに目を逸らされる。
例えば声をかけたとき。怯えたような声をあげて理由にならない理由を口走りながら逃げていく。
例えば皆でいるとき。他の人と話してるときは普通なのに、僕の話題になると挙動不審になる。

おかしいはずなのに皆はおかしくなんてないと言う。勘違い?こんなあからさまに避けられているのに。
僕は作兵衛に何かしたのだろうか。よく藤内や後輩から怒られるくらい僕は鈍感らしいから、何かしていても気付かないのも仕方がないかもしれないけど。




「作兵衛」

一度気になったことは確かめないともやもやする。だから直接本人に聞くことにした。
おそらく委員会へ向かおうとしていた作兵衛を呼び止めると、案の定肩を震わして青ざめた顔で僕を見る。

「あ、か…ず、ま」
「ねぇ作兵衛、話が」
「悪い俺委員会急ぐから!」

そう言って走り出そうとした作兵衛の腕を捕らえる。振り向いて逃げだそうとするけど、逃がしてあげない。だって確かめないと気が済まないもの。
なんて自分勝手な都合なんだと内心苦笑するが今は目の前の作兵衛を逃がさないよう捕らえるので精一杯。ここ二年で僕の身の丈は作兵衛を越したけど、体力系委員会な作兵衛と保健の僕じゃ力の差ってあるから。
でも見下ろす高さにある作兵衛は、綺麗に筋肉ついてるし力もあるけれど細く見える。迷子探しとか委員会で動き回るから痩せてるのかな。

「数馬…数馬!分かった…話、聞くから……腕離せよ」
「あ、うん」

ぼーっと考えてたらいつの間にか大人しくなってた作兵衛にそう言われた。
逃げないなら捕まえてる必要もないし、素直に腕を離す。向き合った作兵衛は全く僕を見ようとしなかった。

「あのさ、僕作兵衛に何かした?」
「え?」
「全く身に覚えないんだけど、最近作兵衛が僕のこと避けてるみたいだから」
「そんなこと、ない」

って言ってるわりに、僕を見ようとしないし距離をとる。

「本当に?」
「本当だ。だから、もういいだろ?俺行くから」

くるりと振り返り歩きだそうとした作兵衛の腕をもう一度捕らえる。顔を見せない作兵衛を、見るために。

「!?離せっ」

バッと振り向いた作兵衛の真っ赤で。
何故?
頭の中で疑問が渦巻いたまま、僕はその場で固まる。作兵衛を捕らえたまま。
作兵衛は何か色々言って逃げようとしてる。でも、途中で反応のない僕を不思議に思ったのか恐る恐る僕を見上げた。
真っ赤になったりんごみたいな顔と上目遣いの視線。ハの字に下がった眉。
なにこれ。こんな作兵衛見たことない。

「……かわいい」
「は?え、なっ」

僕は気付いたら作兵衛の唇を奪っていた。まぁ、つまり接吻したってこと。
最初は目を見開いて驚いてた作兵衛も、自分の現状を理解した途端僕の身体を思い切り突き飛ばした。突き飛ばされた僕はそのまま地面に尻餅をつく。
痛みに顔をしかめつつ作兵衛を見上げると、真っ赤だった顔を更に赤く染めて、涙目になりながら口元に手の甲をあてて僕を見てた。

「(うわ…なんだろ、すごくかわいい)」

そのままぼーっと見つめてると、作兵衛はキッと僕を睨んで叫んだ。

「馬鹿!お前最低だ!馬鹿っ!」

そして走り去った。
今度は追わないし捕まえない。
どうしよう、作兵衛を可愛いと思うなんて。あまつさえ接吻、するなんて。
ドク、ドク、顔に熱が集まってく感覚がする。あぁ、作兵衛が僕を避けた理由、分かってしまったかもしれない。







つまり、恋をしました
(あんな可愛い君に恋をしない訳がない)










書きはじめた当初思ってたのとは違う方向になりましたがこれはこれで。
数富好きですよ。



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