成長+3
卒業ネタ





「勝っても負けても恨みっこナシ。最後の勝負といこうじゃねーか」

目の前で、奴が言った言葉。
俺は手元のクナイを握りしめ、対峙する奴を睨みつける。

「俺は卒業するんだ。これがお前との最後。本気で来ねーと後悔すんのはお前だからな」
「っ…わかってる!」

そう叫んだと同時に奴に向かってクナイを投げ、すぐさま蹴りを繰り出す。そんな攻撃予想してました、とでも言うように奴はふっと俺を軽々超えるくらい飛び上がり、そのまま俺の背後に着地して脇腹へと蹴りを食らわせてきた。

「ぐっ…!」
「ツメがあめーんだよ」

第二波の足が飛んでくる前に、すれすれでそれを避けた俺は懐から八方手裏剣を出して投げる。

「ぶな…っ、おま、毒仕込んだもん投げるか普通!」
「本気でって言ったのはあんただろ!」
「!」

俺のその叫びに一瞬目を見開いたそいつは、それでもすぐにニィと笑みを浮かべ同じ様に懐から縄を取り出していた。
縄。こいつが六年間、振り回して慣れ親しんだ迷子紐。恐らく六年間で一番上達したのはこれじゃないかってくらいの。
縄標が出なかっただけマシ。これに捕まらなきゃいい話だ。

「なら俺も、本気だ」
「上等…っ」

それを振りかぶったと同時に俺は地を蹴る。縄が届かないであろう距離へ避ける為に。
が、読みが外れた。いや、嵌められた。奴は投げる動作だけ見せて直ぐに俺を追ったんだ。迷子捜索で培われたこいつの足は速い。いくら俺が五年間努力しようとこれは絶対に追い越せなかった。
捕まる。そう思った俺は懐からクナイを出して奴の足元へ投げつけ飛び上がった。その時垣間見た奴の口元は弧を描いていて。

「う、わ」

それこそ、本当に嵌められた。飛び上がって木へと上がろうとした俺の足に絡み付いた縄。ぐいっと引かれて嫌でも下へと落ちる。

「っつ〜…」
「首捕った」

背中から地面とこんにちはして痛みに悶える俺の首元にクナイを突き付け、奴が嫌味ったらしい笑顔を浮かべてそう言った。
あぁくそ、結局最後の最後まで勝てなかった。

「またお前の負け。言っただろ、ツメが甘いって」
「…………」
「…………」

けらけら笑う奴に俺が返さないでいると不意に奴も黙り込む。苦笑のような苦痛のような曖昧な表情を浮かべて。

「次会う時は、本当の戦場だな」
「………」
「あんまり、会いたくはないけどな」

自然と、俺の隣に腰を下ろした。こちらを見ないまま言葉を続ける。

「お前とはさぁ、一個下のくせに反抗的で生意気で、結局五年間ずっと喧嘩してきたけどさ」
「…………」
「確かにムカつきはしたけど、嫌いだと思ったことはねぇよ」
「…………」
「……割と好ましい奴だとも思ってたよ」
「っ………」
「だからさ、泣くなよ」

うるさい。そう言いたくても声が出なかった。出るのは嗚咽。それから涙。
そうだ、俺は泣いてるんだ。何故?こいつが卒業して居なくなるから?いい喧嘩相手が居なくなるから?普段は偉そうなこいつが何気なく優しい言葉をかけてくるから?
俺が、こいつに伝えたい事を伝えきれてないから?

「お、れは……っ」
「ん?」
「俺はっ、あんたなんか偉そ、で…高圧的で、先輩だとか思ったこともなくてっホントむかつくって思ってたけどっ」
「うん」
「でもっ、あんたのこと、すげぇと思ってたし」
「うん」
「………っ、好きだったよ!違う、好きだ!今更居なくなるとか、考えたくもないくらい…っ」
「うん」

俺の途切れ途切れの言葉に静かな相槌をうちながら、最後まで聞いてくれた。
俺は、富松作兵衛が好きだ。色が忍者の三禁なのは十分承知だった。でも、惹かれてしまったのはどうしようもない事実だったから。

「俺らは忍者になるだろ」
「お前と俺が結ばれることなんか、有り得ない」
「お互い理解はしてる」
「だから、」





次会う時は幸せな世で
(そしたらさ、)
(今度はお互いもう少し素直になって)
(きちんと幸せになれるよな)










俺も、お前が好きだから。






富池?と思うような文ですが書いてる本人は池富だと思って書いてます。
学園に通ってる時は言えないから、卒業する今だから言える。だから次会う時は戦のない世界で、幸せになれる世界で会おう。
お互いを想い会う池富良いと思います。池富と言うより池→←富?



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