高校に入学して二日目、朝から僕を訪ねてきた子がいた。
つり目で、意志が強そうで、なのにどこか寂しそうな子。なんとなく、僕の幼なじみに似た容姿だった。
その子が、僕の名前を正確に呼び、自分のことを知っているかと問う。でも知らなかった。小学校にも中学にもこんな子居なかったはずだ。
僕が答える前に、彼は僕でも分かる作り笑いを浮かべて背を向けてしまった。僕が分からないことを悟ったんだと思う。その背中はどこか切なそうで、彼のことが分からないのが凄く辛かった。

「あんた、名前は?」

声がした。それは僕ではなく彼に問い掛けるものだった。
その声の主は、背の高い前髪だけ色の違う顔の整った奴だった。

「そうだよ名前教えて?」

チャンスだと思った。彼のことが分かる。そうすれば何かしら思いつくんじゃないかと思って、僕もそいつに乗っかる。
彼は驚いてたようで、小さな声で「なんで」と呟いた。だって気になるんだ。思い出さなくちゃならないような気がするんだ。君のこと、僕は知ってなきゃならないんだ。

「いきなり自分のこと知ってるかって聞かれるんだ、興味もわくさ」

目の前の男が飄々と答えた。
違う。こいつもきっと僕と一緒だ。無自覚で彼のこと思いだそうとしてるんだ。じゃなきゃ、そんな物足りなさそうな顔するわけない。
だけど、その言葉に、彼は泣きそうな笑顔で答えたんだ。

「……俺のことなんか、知らなくていい」

僕は君のこと知りたいよ。
もう一度、僕と友達になってくれないか。







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