※現パロ
※富松と次屋は高校生




「ねぇ、さくべ」

学校帰り、図書館で勉強していたら、不意に向かい側にいた三之助に声をかけられた。

「なんだよ」

顔もあげず、そっけなくそう答えると小さく苦笑されたのが気配で分かる。なんだよ、だってお前、テスト期間なんだから勉強すんのは当たり前だろ。

「俺思ったんだけど」

そう呟いた三之助の声のトーンが低くて、思わず顔をあげた。三之助の手元には生物の教科書。あぁ、明日は生物もあったっけか。ぼーっと考えながら三之助の言葉を待った。

「…作、蝶の幼虫わかる?」
「ばかにしてんのか」
「違うよ。蝶ってさ、繭から孵ったら幼虫だろ?んで成虫になるまでに蛹になって成虫。不思議だと思わない?」

急に何言ってるんだ、そんな事は思わなかった。三之助は時々ズレたこと言い出すから慣れてた。でもそれ、ついこの間先生が話してた。

「まぁ…でもあれだろ。確か蛹のときにいっかい全部細胞溶かして一から再生しなおすんだろ?なんだっけ、あぽ…あぽ?」
「アポトーシス」
「そうそれ」

それが?と首を傾げる。

「だからね、俺も溶けちゃいたいなって思って」
「はぁ?」
「溶けたい。……出来れば作と。溶けて一つになりたいなぁ。ね、作」

ぽかん、その時の俺の表情はまさにそんな表現が似合うだろう。だってそれだけびっくりしたんだ。なんてこと言い出すんだこいつは。
あぁ、顔に熱が集まって来るのが分かる。真っ赤になってんだろうな。くそ、不意打ちは卑怯だろ!

「な、ななな何言ってんだお前!馬鹿か!馬鹿なのか!思考まで方向音痴になったのか!」
「俺方向音痴じゃねーよ」
「うるせぇばか!」






溶解




20100605



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