「さもーん!さんのすけぇー!!」


今日も今日とて迷子捜索。
作兵衛は委員会中に迷子になった左門と三之助を探していた。あの4年の先輩が頼んできたのだから断るわけにもいかない。それに今日は運のいいことにどちらも学園からは出てないとのことだ(しっかり事務員に確認済み)。


「ったく、どこ行きやがったんだあいつらは…」


走り回ったせいで流れ出た汗を袖で拭きつつ溜息をこぼす。いくら走ったところで見つからない。おそらく二人も走り回っているのだから。
誰か見かけ人もいるだろう、そう思いながら壁を曲がった瞬間、


「がっ」
「ぎゃっ」


ぶつかった。頭が。


「〜っ、わりぃ!」
「いや此方こそ…って、」
「……なんだ、池田か」


ぶつかった相手は二年い組の池田三郎次だった。作兵衛とはあまりうまが合わないらしく、目が合えばにらみ合い、な関係。
ひとまず謝ったものの、ぶつかった相手が三郎次と分かると嫌なものを見た、とでも言いたげに三郎次を見やる。


「人にぶつかっといてなんだとはなんだ富松!」
「先輩つけろ敬語使え!つーか先に謝っただろーがっ」
「よそ見して歩いてんじゃねーよ!」「てめえ人のこと言えねーだろが!」


はぁはぁ、
全力で叫びあった後、冷静になった作兵衛がくるりと方向転換した。


「あ?どこ行くんだよ」
「てめーに関係ねぇだろ。俺は迷子探しで忙しいんだ。邪魔したな」


すたすたと歩き出す作兵衛をぽかんと見送る三郎次。そして、はっと何か気付いたように作兵衛を追いかけた。


「おい!」
「…………」
「おい待てよ!」
「…………」
「待てってば!っあ゛ー!待ってください富松センパイ!」


後ろからかけられる声を無視して歩く作兵衛だったが、センパイ、の声にくるりと振り向いた。その振り向いた作兵衛の表情は何処か勝ち誇ったような。逆に三郎次は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。


「なんだよ、池田コウハイ?」
「っとに性格悪いなあんた」
「文句あんのか」
「大ありだ!……じゃなくて、次屋先輩と神崎先輩探してるんでしょ」


にやにやと笑う作兵衛を睨みつつ、三郎次は作兵衛の行動の意図を問う。全く関係ない三郎次に思わぬことを言われた作兵衛は思わずきょとんと目を丸くした。


「そうだけど」
「俺、さっき見た…見ました、よ」
「!ホントか!?」たどたどしい敬語で話された内容に、作兵衛の表情が明るくなる。三郎次は、普段自分には向けられないような作兵衛の表情に戸惑いを覚えた。


「あ、あの、三年の長屋の近くで、二人で座り込んで…」
「それどのくらい前?!」
「え、と…あんたと会う直前だったから……」
「そうか!じゃあそんな遠くには行ってねーな!」


作兵衛はすぐに長屋へと向かって走り出した。が、走り出したところですぐに止まる。置き去りの三郎次を振り返り、


「池田ー!助かった、さんきゅ!」


と、満面の笑顔を向け手を振り再び走り出していった。三郎次はそれをただ見送るだけ。
それからどれだけ経ったか。
作兵衛の背中が見えなくなって暫くその場から動かなかった三郎次の顔がぼんっ、と効果音が聞こえるほど真っ赤になった。そして頭をかかえて踞る。


「〜〜っ、反則だろ!」







不覚にもときめきました

(あんな笑顔、初めて見た)








私は三人称の文は苦手ですorz

20100327



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