カラリ、 障子を開けて寝間着のまま外へ出ると、つんとした寒さに身体が震えた。 春先でだんだん暖かくなってきたと言ってもやはりまだ夜は寒い。そして、今日は取り分け重苦しかった。 「(いやな感じだ)」 ただ厠に行くだけ、なのに心臓が嫌な感じに走っている。何か、何かある。 ふと、視線を庭の方へ向けると人影を見付けた。どくん、心臓が一際強く打たれる。あれは、あれは、 「さく、べえ」 富松作兵衛。なんであんなところに、いやその前にあの姿は。 「作兵衛!」 思わず走り出していた。裸足のままだというのも省みず、作兵衛の元に。 呼ばれて気付いた作兵衛が、空を見上げていた顔をこちらへ向けた。その頬に流れるのは、紅い紅い、 「どうしたこんな時間に。厠か?」 「えっ………あ、あぁ」 くすりと笑う作兵衛は、12歳とは思えないほど大人びていた。艶がある笑みを浮かべ、手に首を持って、 首、 そう、首を持っているんだ。あれは保健室の人体模型なんかじゃない、数刻前まで温かみを持っていた首、生首。 「そ、れ…なんで」 「ん?あぁ曲者がいたからちょっと遊んでたら取れた」 けらけら、笑う。 こんな作兵衛は知らない。なんで、どうして。頭の中がごちゃごちゃになってる。作兵衛が、あの作兵衛が、なんでなんでなんで! その作兵衛が動いた。持っていた首を落とした。べちゃり、嫌な音がする。そして空になった両手を見て、呆然とした。手は、月の光に照らされていて分かる、真っ赤だった。それが曲者のものなのかそれとも作兵衛が怪我をしてできたものなのか、それは分からないけれど真っ赤だった。 くくっ、小さく笑う声がした。今度は艶のある先程のあれではなく、自嘲を含んだような。自分の手を見つめながら笑っている。 「俺、おかしくなったのかな」 「作兵衛」 「これ、見ても、何とも思わねえんだ。怖いとか、惨いとか、なんで自分がこんなこと出来たか分からねぇんだ なぁ、 」 ありふれた世界の崩壊 (それでも僕は、君を愛しいと思う) 20100323 作がおかしくなるのもいいなーってふと思いたったので書きなぐりました。 相手は藤内か孫兵の二通りで。どちらでもいいと思います。と言うよりとどっちかに決められなかっただけ。 |