帽子屋と白兎



「おお! 久しぶりだなっ帽子屋!」

「・・・・・・突然出てきましたね、白兎。あまりにも自然に唐突過ぎて、せっかくの紅茶がスーツに掛かりました。ああ、勿体ない」

「お前はそんなことでちまちま怒る奴でもなかろう! というか、スーツに紅茶が掛かった事よりも、紅茶がもったいないと言えるその精神が、実にお前らしいな」

「お褒めにあずかり光栄です。で、今日はなんの用です?」

「いや、たまたま三月を探しに行っていたら、ツリー・スター男爵に頼んで穴を掘り・・・・・・気付いたら此処にいた」

「本当に気まぐれですね、男爵様は」

「そこが彼のいいところでもあるな。思わぬところに行けることもあるのだ。ところで三月は?」

「貴方ともあろう方が。今は散歩の時間ですよ」

「そうだった! 先回りしようとしてこんな僻地へ飛ばされてしまったのだ!」

「少しすれば帰るでしょう。待つなら静かにしていてください」

「おぉ、帽子屋! つれないな!! 客をもてなすどころか背を向けて読書を再開するなんて!」

「・・・・・・」

「まったく、もてなしの心がなっておらん! ここは黙って茶を出すところだろう! こんな風に!」

「・・・・・・ズズズ」

「客である私の茶を黙って飲んでどうする! まあいい。それに菓子を付けてだな」

「・・・・・・もぐもぐ」

「まぁた勝手に食いおって! まあいい。そして客をもてなす飾り付けだ。紙を借りるぞ帽子屋」

「・・・・・・チョキチョキ」

「いや、口からその擬声語がでるのはさすがにおかしいだろう。まあいい。で、テーブルクロスを鮮やかな青色にして、と」

「・・・・・・」

「飽きたのか? まあいい。最後にこの帽子を飾り付けして・・・・・・」

「・・・・・・ずこーん」

「のわっ!!! 帽子の頭が割れてなにかが飛び出した!!! びっくりしたではないか帽子屋!! びっくり箱ならぬびっくり帽子仕様なわけだな。ん? バネの先がつまらんな。ここは三月の人形と相場が決まっておろうが! ついでにつばの回りを鮮やかにしてやろう! これはやっぱり・・・・・・」

************

・・・・・・ガチャッ

「ただいま帽子屋〜」

「お帰り、三月。早速だけれど、美味しい紅茶とお菓子を」

「うん、了解ー・・・・・・って、何、そ、れ?」

「ずっこーん!!」

「うっわ!!! 帽子屋の帽子が爆発したっ!!! なにこれ!!! すっごい!!! カッコイイ!!!」

「三月よ、そこはレディとして『きゃっ』の一言でも言うべきではないかね? そんな三月が愛しくて仕方ないんだが!」

「てか、バネの先っちょ私? わたしの人形? 手ぇ込んでるねっ! うわー感激ー」

「おーい三月ー。無視しないでくれないかーぃ」

「うっわ!!! ちょっ、なんでいる? 白兎!! ドタバタ」

「三月、早く紅茶を」

「『ドタバタ』なんて口で言ってしまうほど嬉しいのだな、三月〜!!」

「それどころじゃない〜〜!!!」




End

ドタバタ騒ぎ。彼らの日常。


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