藍と愛 ( 1 / 3 )



きゅっきゅっ、だむだむ。
ないっしゅー、どんまーい。

体育館に反響する音と声の中で、めいっぱいに腕を伸ばして、シュート。

「ナイッシュー!」

数々のBGMに埋もれてわずかに聞こえた、パサリ、という音に続き、着地。

俺、今日も部活に生きてます。

高校に入学して早1か月。5月第一週、GWに突入し、バスケ部では合宿が始まった。
うちの学校、お勉強だけじゃなく部活も盛んで、某皇帝風に言うと、運動部の辞書にオフという文字などないのだ。

「彰太ー」


…はっ。この声は。

愛しの、藤高大先生さまのお声でございます。
先生は、体育館のスミっこでクリップボードの用紙にペンを走らせながら、俺を呼んだ。

「はいっ!」

「ちゃんと周り見ろよ、無理なシュートは打たなくていい」



…あれ?

先生は、何だか普段よりもツンとして、言った。
いつもなら、まずは入ったシュートをホメてくれるのに。

「…はーい」

「よし、次、入れー」

先生の声に促されて、体育館の端の方でアップをしていた部員が、俺たちと入れ替わりにコートに入った。
また、きゅっきゅっと部活の音が響き始める。
俺は端に置いていたタオルを拾い上げて、顔全体を覆うように、汗を拭った。

…そんなに酷いシュートじゃなかったのになー。
そりゃあ、ちょっと無理して打った感はあったけどさあ。そんなに気になる程じゃないし。俺がイケると思ったから打ったんだし。結果、入ったし。ま、ちょっとカッコつけたかったのもあるけど、ほんとは。欲張るな、ってことかなー。

…はい、反省会おしまい。

タオルに埋めていた顔を上げて、目だけを出して先生の横顔を盗み見た。

もちろん、先生の視線はコートに注がれている。

目があうことは、ない。

そんな俺の気も知らず、コートの中では先輩たちが大粒の汗を弾かせて、ボールを追っている。
その姿はやっぱり、俺よりもずっと上手くて。
息つく暇もないくらい、素早くて、華麗なパスがくるくる繰り出される。
そして、確実なシュート。





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