鮮やかに恋 ( 4 / 5 )



「…だって」

顔は上げられなくて、俯きぎみのまま、渇ききった口をようやく開いた。
翔がこっちを凝視してるのがわかる。

「…嵐さんと雅紀さんの時とか」
「うん、」
「…神野さんの時とか」
「…うん」

ここ一月とちょっとのことをゆっくり思い返しながら、言葉を振り絞る。
嵐さんと雅紀さんの時も、神野さんの時も、何となく、翔は同性どうしの恋愛を遠ざけてる感じがしてた。だから、俺も話をしたら引かれるんじゃないか、って思ってた。それが嫌で、黙ってた。

…だけど、違う。

本当に友達だったら、ちゃんと言わなきゃ。言って、わかってもらわなきゃ。

「…かけるはさあ、」
「お、おれ?」

顔を上げたら、翔はあからさまにビビった顔をしてた。
ぐっと生唾飲み込んで、言う。

「……男、同士とか、ダメなんだと思ってたんだ。…翔に、引かれたくなかったし」
「な…っ、んなことないって!」


かなり覚悟を決めて喋ったのに、思いがけず遮られた。
翔は、バンッ、と机を叩いて立ち上がっていた。

「そりゃ…最初はびっくりしたけどさ…おれ恋愛経験乏しいから偉そうに言えないけど、恋愛って自由なモンだと思うし!それに、友達の恋は応援したいって思うのが普通だと思う!よ!」

いつの間にか拳を握りしめてた翔は、周囲の視線をモロに食らっている。そしてそれに気付いたんだろう、翔は縮こまるようにその場に座った。

「…ごめ」
「んーん、…嬉しいよ」

思わず吹き出してしまった。
翔のその一生懸命さが、嬉しくて。
俺が思っていたより遥かに、翔は俺のことをちゃんと考えていてくれた。

…それが、嬉しかった。


「ごめんね、翔。黙ってて」

そう思ったら、するりと言葉は出てきた。

「…嫌われたくなくて。ちゃんと言うべきだった。今朝も、嫌な言い方してごめん。」
「うん、いーよ。おれこそごめん」

翔もにっこり笑ってくれる。
すうっと、モヤモヤが晴れていくようだった。

「翔も話、聞かせてよ?」
「……うん?」
「GWさ、神野さんと二人だったんだろー?何かなかったの?」
「何もないって!」
「あれ…なんか、顔赤くね?」
「赤くないっ!!」

言って良かった。
翔とこんな風に笑えて良かった。

嬉しい。楽しい。

この気持ちを、あの人に伝えたいと、思った。





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