鮮やかに恋 ( 3 / 5 )
…これは想定外な展開。
「いいじゃないか。愛し合うことはいいことだぞ、たとえ同性でも、私は応援するぞ、うん、うん」
…校長からキラキラオーラが出ているなんて、気のせいだと思いたい。
「…だけどな、辻本」
すると、今までの態度が一変、今度は表情も声色も真面目なものになった。
「友より愛だなんて、馬鹿な事は考えるなよ」
その目は、真っ直ぐに俺を見つめている。
「どちらも掴み取ってこそ、男だからな」
そしてまた、校長は何とも美しく、微笑んだ。
…どうやら、この人は何でもお見通しらしい。
俺も思わず笑みを溢した。
「…分かりました」
......
結局。
何のお咎め無しというのは問題だと思い直してしまった校長に、退寮命令を頂いてしまった俺。
全寮制の学校に寮外から通うのかという矛盾点をもまるっと無視してみせた校長には、全く、惚れ惚れせざるを得ない。
そして、普段通りの、翔とランチタイム。
校長にありがたいお言葉を頂いたのはいいが、午前中の授業はなんだかぎこちないままに終わってしまった。校長の話を聞いて、今朝あんな口調で言ってしまったことは後悔したし、黙っていたことも謝りたいとは思った。
けど、どうしても、人混みの中では言い出せなくて。それなら、昼飯の時間だと、決心して来たつもりなのに、なかなか口は動いてくれなくて。
「ね、彰太…」
「ん?なに?」
そうやって悶々としてたところ、最初に口を開いたのは翔の方。
咄嗟に平静を装った。
「おれ、初めて聞いたんだけど」
「…は?なにが?」
…わかってる。
その顔。きっと、神野さんのこと訊いたときも俺、こんな顔してた。
…わかってて、惚けた。
「だから…その、どうして、言ってくれなかったのかなー、って…」
藤高先生のこと、って、翔は小さく付け足した。
…ちゃんと心、決めたはずなのに。
声を出すのが怖かった。
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