鮮やかに恋 ( 2 / 5 )
「…辻本彰太!今すぐ校長室に来なさい!」
甲高い耳障りな声が、俺を現実に引き戻す。顔を真っ赤にした、嫌われ者のおばさん先生が喚くように俺の名前を呼んでいた。
…まあ、ここまでは想定内だ。
さて、厳重注意で済むか、はたまた寮を出されるか。まさか停学退学まではならないだろうけど、寮を出ていけとなったら困るなあ。住むところを探さなくては、家に帰るのは嫌だ。
「じゃあ、また後で」
「あ、うん…」
そんなことを考えながら翔にバイバイして、先生の背中を追った。
......
「時間外外出及び無断外泊」
ぱさり、1枚の紙切れが静かにその手を離れた。すらりと伸びた細い指の先、切り揃えられた爪は薄いピンク色にキラキラしている。
…のは、おばさん先生ではなく。
「1年の割になかなかやるじゃないか、辻本彰太」
真っ赤な口紅をさした口角を上げ不敵に笑う、我らが校長。校長というポジションにいるくらいだ、けっこうなお年なんだろうけど、老いた印象は全く感じられない。
「校長!そんな流暢なことを言っている場合では…」
「ちょっとお前、出ていってくれないか。私は辻本と話がしたいんだよ」
ぎゃんぎゃん喚くおばさん先生を一蹴。
…カッケーッス、校長。
おばさん先生は顔を真っ赤にして校長室を出ていった。
「…涼二と仲直りはしたか?」
ばたん、と戸が閉まるのを待って、校長は口を開いた。
涼二、という名前に一瞬フリーズした。
「…とりあえず、しました」
「そうか、良かったじゃないか」
先生の下の名前、そう言われれば、涼二だった。
…なんだこの会話。
「…あの、」
「何だ」
「…何か、こう、罰とかは、無いんですか?」
「何だ?欲しいのか?」
「いや…べつに…」
余りにもあっさり、まるで世間話かのような空気に、思わず自分から尋ねてしまった。
校長はすっとんきょうな声をあげる。
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