藍と愛 ( 2 / 3 )



「よーし、いいぞ雅紀ー」

先生の声が低く響いた。
それに気付いた雅紀さんは、下げたのか下げないのか分からないくらいに小さく、ペコリと頭を下げていた。

…いいなあ。

いや、別に先生にホメられたくてバスケやってるワケじゃないんだけど。

…けど。

やっぱり、認めてもらいたい。

…もっと頑張らないと。

ジッと、先輩たちの動きを観察する。盗むんだ、技を。
けれど、たまに飛ぶ先生の指示が無遠慮に俺の耳に入ってきて、どうにも集中できない(先生のせいにするワケじゃないけど)。しかも気になるのは、ホメ言葉ばかり。普段は特に気に留めたこともないのに。

…どうしたんだ、俺。



「よし、じゃあ5分休憩ー」

いつの間にか先輩たちの番も終わったらしく、先生が全体に声をかける。
僅かにしかない休憩時間、皆がタオルを手に取り、水分を摂り、部活を乗りきるべく動き始めた。
俺も、もう一つぐるりと顔を拭いて、立ち上がる。水が飲みたい。

「しょーー…うた!!」
「うわあ!!」

すると。
背中に物凄い衝撃がはしった。

「ちょ、嵐さん!タックルは勘弁してください!!」
「うるせーちびっこ!このやろぉおぉう!」
「あー!今、ちびって言いましたね!?言っておきますけど、嵐さんもちびですからね!?」
「なーに言ってんだこの!」

いつでもハイテンションな、バスケ部長の嵐さんは、容赦なく俺の体にグイグイ体重をかけてくる。俺の抵抗はなんの効果も発揮してはくれず、比喩じゃなくて、潰されそう。

「…彰太、」
「はい?」
「何かあったか?」

すると。頬と頬が触れ合うくらいの距離で、嵐さんは囁いた。

「…え?」

神妙な面持ちの嵐さんは、そこでようやく俺を解放してくれた。

「や、何かお前さー…普段より、プレーにキレがない、っつーか、なんつーか…」

「……いやぁ、別に何もないっスよ!何も!!」
「何も無くてアレだったら問題だから言ってるんだっつーの!何も無いのに越したことは無いけど、しっかりしろよ?」
「は、はーい…」

お見事!と拍手を送りたくなるほどの、部長らしい説教を披露してくれた嵐さんは、そのまま軽快な足取りで去って行った。





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