真っ赤に熟れる ( 1 / 3 )
『…いいんだろ?』
『よろしくお願いしますっ!』
…え、なに、これ。
…ああ、ニヤニヤする。
賑わう廊下をニヤニヤ顔で独り歩く俺は、ハタから見たらきっと、相当キモいんだろう。
昨日。
勢いでコクって(コクった内に入るのかどうかは微妙だけど)、流されるままに、先生と、ちゅー。
それらが、映像でずっとエンドレスループ。その度に、ニヤニヤニヤニヤ、してる気がする。まるで恋する乙女です、俺。
自分でも不思議だ。だって相手は男だし、しかもオッサンだし。
俺、こんなヤツじゃなかったよ!
そんな俺。
数学教科係としての職務を遂行中です。先生に提出を命じられ、昨日の授業で使った全員分のプリントを、先生のもとへ配達します。
「失礼しまーす!」
コーヒーの香り漂う職員室へ、元気よく入室。
すぐに先生の姿が目に入った。
…うん、今日も白衣だ。
「先生っ!」
「ん?…おー、彰太か」
先生に誉められたいが為、プリントを携え、元気にニコニコ話しかけた。
だけど、その張り切りも空しく、パソコンに向かって仕事していたらしい先生は、チラリと俺に視線をくれると、すぐにパソコンに目を戻してしまう。
「プリント持ってきましたっ!」
「おー、さんきゅ。置いといて」
負けじと、張った声でアピールしてみる。
けれど先生は、カチカチとキーボードを鳴らしながら、素っ気なく応えた。
…あれ?
何だか拍子抜け。何なら、昨日以上に他人行儀。
「どうした?」
「…や、何も。」
…もしかして、バレちゃいけない系?
そうか、先生と生徒が付き合ってるなんてバレたらマズイのか。そっか、最近の月9でもあるもんな。だから先生は敢えて、こういう態度を取ってるのか。そうかそうか。
なんだか妙に納得。ちゃんと先生は考えてくれているんだ、なんて思ってニヤけそうになる。
…いかんいかん、せっかく先生が気を遣ってくれているのに。我慢、我慢。
頬の筋肉を一生懸命抑えて、職員室を後にした。
「藤高先生!」
そのとき。
彼を呼ぶ声が。
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