桃色キス ( 2 / 3 )



「…じゃあ、先生!」
「…今度は何だよ」

ハァ、と先生は半ば呆れ気味に笑顔を溢した。
…俺いまきっと、アホだと思われてる。

「ゲイってまじすか!」
「まじまじ」


「じゃあ、俺、どーですか!?」
「あー、いいよ。おっけー。」



………え?


がらがらっ。

「おーし席つけー」

しばらく、ポカンとした。
先生は何事もなかったかのように教室に入っていく。
…え、俺、流されると思った。ん、もしかして、ただの冗談なの?え?

「何やってんだ彰太。早くソレ配れよ」
「はっ、はいっ!」


…初任務、成功?


......


…勢いって、怖い。

先輩のドリブルから、パス、シュート、ゴールリングに吸い込まれる瞬間、ボールを淡々と目で追いながら、俺は何度もそれを反芻した。
何が怖いって、あんなコトをさらりと口走った自分が怖い。何も戸惑うことなくさらりと流せる先生が怖い。
でも、そっか、先生は慣れっこなのかもしれない。オトナになるって、あーゆうことかもしれない、と、俺はしみじみ思った。

「終わり!片付け!」

嵐さんが叫ぶ。
1年は駆け足で、ボールかごや得点板を片付け。
窓の外を見ると、既にもう薄暗くなっていた。

「整列!─ありがとうございましたッ!」

「─したッ!」

一列に並んで挨拶したあと、部員は、つかれたーとか、腹へったーとか言いながら、部室へと雪崩れ込む。

「彰太ーお前うまいなー!」
「あっ、あざます!」
「お前そんな誉めっとなー、すぐスタメン取られんだからな!な、彰太?」
「そっスよ!取っちゃいますよ!…なんつって!」
「なーにー?このやろぉ…!」
「あたッ!ちょ、先輩、やめてぇーっ!」

長時間の練習で汗にまみれたシャツを脱いだとき、2年の先輩がテンション高めに絡んできた。
1年だから、ボールに触れるのなんてまだ先だと思ってたけど、1年から3年まで同じ練習メニューで(筋トレと走り込みの量はえげつないけど)、思っていた以上にボールを使えたのか良かった。張り切った甲斐あって、先輩の目に留まっていたみたいだ。
しかしまあ、「調子乗ってんじゃねーよ」とか言う、インケンな先輩が居なくてよかった。みんな爽やかボーイだ。

「じゃ、1年はカギ閉めて帰れなー」
「はいっ!お疲れっした!」

先輩たちはこのあと、学食でメシなんだろう。驚くべき速さで制服に着替えると、早々に部室を出ていった。



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