真っ赤な海で溺死
「ただいま」
ギィ、と苦しげに軋むドアの方に視線を投げれば、仕事終りの衛が真っ黒いジャケットの汚れを払いながらブーツを蹴っ飛ばすように脱ぎ捨てていた。
「…お帰り」
薄汚い夕刊に目線を戻し、俄に漂う血臭を鼻孔に招くと、背後でばさりとジャケットが音を立てる。俺がその音に振り向くよりも早くするりと首元に細腕が回った。衛は頬擦りでもするかのように顔をすぐ近くまで寄せてくる。
新聞紙は適当に、くしゃりと畳んで放り投げた。すぐ傍にあるその顎をくいと引き寄せて、吸い付くように唇を合わせる。
控えめなリップ音が聞こえ始めたころ、早々に俺の口内を探り始めたのは衛の方だった。入り込んでくる舌を拒絶することなく受け入れてやる。どこか懸命さが感じられるそれがとても愛らしかったのだ。
「…なに、がっつくね」
「…も、限界」
限界、っていったって、お互いの仕事が重なったりオフが合わなかったりして、たった3日、会わないだけなのに。まあしかし、そんな我慢のきかないはしたない身体にしたのは俺なのだが。
「…来いよ」
ベッドの上に横になり、目一杯低めた声で誘う。
…限界なのは衛だけじゃない。
欲に染まった濡れた瞳で見つめられたら、理性を繋ぎ止めておくのも精一杯で。
…俺だって、限界、だ。
......
だいたい、セックスする時は衛のフェラから始まる。衛の負担になるのは分かってるけど好きだ、って言ったら衛は、シゲさんが好きなことならしたいよ、って言った。
「し、シゲさん…っ、今日は、いいの…?」
だけど今晩は衛が俺に構う暇も与えず、纏ったシャツを早々にむしり取り衛の身体を撫で回していき、至るところに赤い印を作る。
当然ながら衛もそんな俺に違和感を覚えたようで、むず痒そうに身体を捩りながら潤み始めた二つの目をこちらに向けた。
「…限界なのはお前だけじゃねーんだよ」
意識的に掠れさせた声で耳元で囁きながらきゅっと胸の突起を摘まんでやると、電流でも走ったかのようにビクンと身体を震わせた。さらに反対側のを舌で押し潰すように虐めると、だんだん衛の息も荒くなっていく。
「あ…っ、んっ…ふ、あ、あ…」
「可愛い、衛…」
心底うっとりとしたような声色だと、自分でも思う。べろりと衛の首筋から耳たぶの辺りにかけてをなぞるように舐め、たまに唇で食むようにしたり、軽く歯を立てたり、俺の全部の所作でびくびくと身体を揺らし感じる衛が、愛しくてたまらない。
「けど…感じすぎ、じゃねーか…?」
するりと衛の細身のジーンズを腿の辺りまで下ろし、下着の上から優しく、まるで壊れ物でも扱うかのように丁寧に触れる。
するとそこは既に芯を持っていて先端はとろとろと溶け始め下着にじんわりシミを作っていた。
そのまま、下着の上から先端の窪みを掻くように弄ると、衛はまた身体を震わせる。
「だっ、て、もう…あ、みっか、も…んっ」
「たった3日でコレなのかよ、」
息も絶え絶えに衛がようやく声を絞り出したのを軽く耳へ通してから、唾液で指二本を濡らしていく。ちゅっ、くちゅ、とワザとやらしい音をさせて衛を煽ってやるのだ。そうすると、俺の姿に奪われた目が、これから突っ込まれる期待をたっぷり滲ませて、見詰めてくる。
いつもならもう少し焦らすのだけど、俺も衛も色んなイミでキツいワケで。
「あ…っ!ん、あ、あ…」
3日間ご無沙汰だったからだろうか、入れたナカがいつもよりキツく感じる。
ほぐすように、ナカを押し拡げるように、指を進めていく。
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