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高校二年になった。
とはいえ、クラス替えもなく、これといって代わり映えはしない。今日も今日とて、お勉学に励むのみ。
そんな春。
「美人教育実習生!」
「後輩でセーラー黒ハイソ」
「近所の新婚ホヤホヤの幼なじみのねーちゃんを…」
「「ガバッと!!!」」
そんな春、放課後の教室で繰り広げられる、燃えるシチュエーション談義。
いくらお坊っちゃん学校と言えど、学力テストが終わるや否や浮かれて下ネタで盛り上がるヤツだって、もちろん存在するワケで。
だって男子校ですから。
「やめて充!あんたのこと、弟みたいに思ってたのに…!」
「姉ちゃん…俺は姉ちゃんのこと、ずっと女として見てた…」
「…俺の名前を使うな」
そもそもなんでこんな話になったんだっけ。
誰かがテスト勉強の為にオナ禁してたから、ようやく解禁だぜ、って話から発展した気がする。
ついに小芝居まで始まった。しかも俺の名前を使ってきやがる。ごめん、特に燃えない。
「じゃあ充はどんなんが良いんだよ!言ってみい!」
「えー…」
鼻息の荒いこいつらが怖い。
だいたいにして、女とのセックスなんてしばらくしていない。まあ経験値でいったらこいつらよりは上だろうが。
よくよく考えれば、耳元にめっきり弱くなった、と思う。乳首もあいつのお陰で完全に開発されてしまったし。耳元で囁かれながら、ねっとり全身を撫でられ、舐められ、焦らされ、我慢できなくなって思わず懇願して、突っ込まれてガンガン激しくされてワケわかんないくらい気持ち良くなってイく、ってのが最近のパターンで、お気に入り、かもしれない。
「……やべ、ムラッときた」
「ばかやろっ妄想してんじゃねーよ!!」
ばしん、と頭を叩かれた。衝撃が下腹部に響く。
熱い吐息とか肌の濡れた質感とか、リアルによみがえってきて、やばい。
「…ちょっとトイレ」
「抜くのかよ!」
「や、抜いてもらうんだろ」
「ぴんぽーん」
がたん、立ち上がって教室をあとにする。
いつの間にか、俺とあいつがあはんうふんな関係だっていうことは学校じゅうの誰もが知ってる、くらいの勢いで広まってしまっていた。最初の内は嫌だったが、今では開き直って堂々とイチャつけるようになった。
さて、あいつはどこにいるでしょう。
「………朔哉、今日…」
「……暇…なに…?」
…いた。
いやはや、目立つ。この点は便利だ。
玄関そばの自販機の前、一緒にいるのは、あいつの何番目かのお気に入り。何やら仲睦まじくお話し中である。
「朔哉」
階段を下りながら、名前を呼ぶ。二人一緒にこちらを向いた。
ちょっとドキドキ。何だかんだ、俺から誘うことってほんとに数えるくらいしかないのだ。
「なに?」
「や、ちょっとムラッときちゃって。」
「…いーよ。どこがいい?」
「校舎でいーよ。どっか空いてるとこ」
淡々と進んでいく。校舎チョイスは、さっきの談義で教室が舞台なのが多かったから。
その脇で、何番目かが気まずそうに目を泳がせていた。
「じゃ、ごめん。今日は無理だわ」
「あ、うん、大丈夫…」
じゃあ、と足早に去っていく後ろ姿をどこか上から見下していた俺は、やっぱり醜いのかもしれない。
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「あ、んっ、はぁ…ッふぅ…」
結局いつもの空き教室で、机を抱き締めて後ろから突かれる格好になる。ほんとは騎乗位にしたかったけど、さすがに狭いのでやめた。
校舎の端に位置するここは、生徒の声も届くことなく、ギシギシと動く机の鳴く声、俺の荒い呼吸、濡れた音しか響かない。
「…今日、さあ、1年生にさ、なかなか、可愛いヤツが、いてさあ…」
律動に合わせ、言葉を切りながら朔哉は言う。
「つまみ食い、しちゃった」
ぼやける意識の中で、なんとなくその意味を悟った俺は、ゆっくり振り向いて、その顔を見上げた。
「…ッ、ヤってる、最中に…っ他のヤツの、話、すんなよなあ…っ」
はぁ、と息を吐く。唇の端をつうと唾液がすべり落ちていった。
同時、表情が、消えた。
「…ふーん、充、ずいぶん、偉くなったんだね?」
しまった、と弁解に口を開くよりも早く、猛る熱が更に奥へと捩じ込まれた。
「ひ、あぁ…ッ!あ、やあっ、っ、ごめ…なさ…ぁああ!」
入り口からずっと奥まで、ずぼずぼと激しく早く出し入れされてしまうと、全身の力が抜けて、机にすがりつくしかなくなった。それを叱るかのように、腰を両手で抑えつけ、叩き込むようにピストンしてくる。
「お前のモノになった覚えは無いからな」
さらに速くなる動きに、声を抑えることもできず、ただ喘いだ。
気持ちよくて、気持ちよすぎて。
気持ちが無くて。
頬を涙が伝った。
----0928
折り返し地点?かな?
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