▼ 暴走 : 7 / 14
......
「お世話になります」
…普通の人じゃん。
これが最初の印象。すらりと伸びる細い身体は、神野さんと並ぶほどの背丈。焦げ茶色の髪は、長すぎず短すぎず爽やかにカットされている
夕飯も済んで、これからみんなで(嵐くんに巻き込まれて)お勉強、という時、神野さんに連れられ、その彼はやってきた。
「…朔哉、コレ、誰?」
…前言撤回。
普通の人は、人間のことを、コレ、なんて言わない。神野さんには悪いけど、ちょっとムッとした。
「オレの、恋人。」
そのイライラも束の間。
まさかそんな風に紹介されるとは思っていなくて、どき、と心臓が鳴る。スルリと自然に肩に回された腕が、何だか落ち着かない。
「…へぇ、コレが?」
すると彼、慶護さんはワザとらしく身体を折り曲げ、俺の目線まで顔を下ろした。
まるで、小さな子供に親がするみたいに。
「…よろしくね」
そして彼は、にっこり笑った。
…またこの人、コレ、って言った。
「…近いよ、慶護」
「ああ、ゴメン」
そのニコニコを崩すことなく彼は身体を起こす。
「あ、嵐くん久しぶり!背、伸びた?」
「…お前とは話したくない」
彼とは対照的に、嵐くんはムスッとしてそっぽを向いた。どうやら、よほど彼のことが気に食わないらしい。
「…じゃあ、始めますか」
─そして、奏斗くんの一声で、勉強会が始まった。
bkm
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