暴走 : 7 / 14

......


「お世話になります」

…普通の人じゃん。

これが最初の印象。すらりと伸びる細い身体は、神野さんと並ぶほどの背丈。焦げ茶色の髪は、長すぎず短すぎず爽やかにカットされている

夕飯も済んで、これからみんなで(嵐くんに巻き込まれて)お勉強、という時、神野さんに連れられ、その彼はやってきた。

「…朔哉、コレ、誰?」

…前言撤回。

普通の人は、人間のことを、コレ、なんて言わない。神野さんには悪いけど、ちょっとムッとした。

「オレの、恋人。」

そのイライラも束の間。
まさかそんな風に紹介されるとは思っていなくて、どき、と心臓が鳴る。スルリと自然に肩に回された腕が、何だか落ち着かない。

「…へぇ、コレが?」

すると彼、慶護さんはワザとらしく身体を折り曲げ、俺の目線まで顔を下ろした。
まるで、小さな子供に親がするみたいに。

「…よろしくね」

そして彼は、にっこり笑った。

…またこの人、コレ、って言った。

「…近いよ、慶護」
「ああ、ゴメン」

そのニコニコを崩すことなく彼は身体を起こす。

「あ、嵐くん久しぶり!背、伸びた?」
「…お前とは話したくない」

彼とは対照的に、嵐くんはムスッとしてそっぽを向いた。どうやら、よほど彼のことが気に食わないらしい。

「…じゃあ、始めますか」

─そして、奏斗くんの一声で、勉強会が始まった。



bkm


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