▼ 衝撃 : 16 / 17
目の前にはブルー、耳を塞ぐ歓声。
ゴールと同時にすっ転んだらしい俺は、グラウンドで天を仰いでいた。
「いってぇ…」
俺の隣でむくりと起き上がる朔哉。首だけを動かして、朔哉を見上げる。
「ハァ…かける……速いな…ハァ…」
「…うん……陸上…やってたから……」
「へぇー……そっかぁ…」
忘れていた思いがよみがえってきた。走ることがこんなに楽しいのはきっと、久しぶりだから、だけではない。
…ズキ、ズキ、ズキ。
それなのに、身体じゅうに響く悲鳴。
「……………ふはっ」
突然、朔哉が吹き出した。
「………なに…」
「いや…かけっこして…楽しいなんて……幼稚園ぶり…じゃねーかなぁ…」
…ズキ、ズキ、ズキ。
よっ、と朔哉は立ち上がって、俺に向き合った。
差し出された手。
…ズキ、ズキ、ズキ。
表情は、とてもやわらかい。
…ズキ、ズキ、ズキ。
「……翔だから、かな」
…ズキン
「……………さくや、」
「…何?」
…ズキ、ズキ、ズキ。
…ズキ、ズキ、ズキ。
…ズキ、ズキ、ズキ。
「………ッ…」
…ズキ、ズキ、ズキ。
「……………なんでも、ない…」
言えるわけない。
bkm
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