衝撃 : 14 / 17

「…なに?」

「朔哉が呼んでるよ」

にっこり。
そんな擬音語がぴったり合う。







『第5レーン、神野朔哉くーん』


不気味ささえ感じさせるその微笑みは、一瞬で、崩れた。








「…………うっそー」


ぐらり。

引かれた腕につられて、肩が、胸が、腿が、爪先が、傾く。




そして、触れ合うのは。




「その気がないなら、俺がその気にさせてやるから」


こびりついて離れないその感触と、獣のようにギラついた眼差しに支配されて、ただその場に立ち尽くした。




「朔哉さー、積極的に行事なんかに出るような奴じゃなかったんだよねー」

恭祐くんもそれを眺めているようだった。

「それなのに、はりきっちゃってさ…」

「去年と何がちがうんだろーね?」



「翔!」

まさか今このとき誰かに呼ばれる、ましてやそれが朔哉だなんて思ってもみない俺は、過剰なほどに驚いた。
お題を読まれたのだろう、朔哉は校庭の真ん中にいるみたいだ。

「行けば?」

そう言い捨て、恭祐くんも自陣に戻っていく。
今は朔哉の近くにいたくない。
けれど、この状況をこのままにするわけにもいかない。
心をモヤに覆われたまま、俺も仕方なく朔哉のもとへ走り出した。
…やばい、お題聞いてなかった。

「…お題、なに?」
「ん?きいてなかった?おれが走る番なのに?」
「ご、ごめん…」

朔哉は、俺が恭祐と居たことに気づいていないようだった。
…ズキ、ズキ、ズキ。
一定のリズムで心臓が鳴いている。


bkm


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